2024年8月30日13時15分

ワールドミッションレポート(8月30日):エジプト 「ゴミ」から神の子へ(4)

執筆者 : 石野博

夫に改宗したことが知られてしまい、ひどい暴力を受けた末、一方的に離婚させられたサラは、ついに最愛の息子たちとも引き離されてしまった。改宗者には命の危険さえ及ぶエジプト社会で、天涯孤独となった細腕の女性が一人で生きていくことは、あまりにも過酷であった。八方塞がりのサラであったが、彼女には自分の訴えを叫び祈ることのできる方がいた。そう、それは天におられる父なる神だ。そして彼女の祈りは聞かれ、新たな道が開かれたのである(※登場する人物は、安全上の理由から仮名となる)。(第1回から読む)

他に頼るところがなかったサラは、リディアに助けを求めた。リディアは、彼女をオープンドアーズの現地スタッフであるシャリーンにつないでくれた。シャリーンは、サラが家の教会のメンバーとなり、安全な住まいを見つけることを助けてくれた。これら現地のパートナーたちは、サラが新しい街の病院で、新しい仕事を見つけることも手伝ってくれたのだ。

「シャリーンは、全ての段階を共に歩み、私の側に立ち、励まし、手を握り、涙を拭ってくれました。彼女の助けでどれほど信仰が強められたことか。彼女は、私が直面している問題に、どう対処するのかを教えてくれました。私が過去に経験した困難、そして今も進行中の困難を、どう克服すべきか教えてくれたのです」

シャリーンはまた、サラの継続的なフォローアップと支援を開始し、トラウマ・カウンセリングを手伝い、癒やしと成長、そして変革の旅へと彼女を導いた。

「私が今経験している新しい環境での旅は、主イエスが私のために別の計画を持っておられることを理解させてくれました。そしてその計画とは、私が望んだものよりもずっと素晴らしいことを知ったのです」とサラは言う。

変化は一夜にして起こったわけではないが、暗黒の日々から10年たった今でも、サラは自分を守るために、ムスリムのように生活することを強いられている。家ではキリスト教徒としての素顔で生き、それ以外の場所ではイスラム教徒を装って生きている。改宗が発覚すれば、それは破壊的なリスクとなるのだ。これが命の危険にすらなり得ることを、彼女はよく知っているのである。

サラはまた、厳格なイスラム教育によって染みついたアイデンティティーから解放されることを学ばなければならなかった。その時に植え付けられた彼女のセルフイメージは、結婚して子どもを産み、夫のあらゆる要求と期待に応える奴隷のような存在だった。しかし、イエスについて学べば学ぶほど、彼女は自分自身を神が見ておられるように見られるようになった。すなわち、自分は神の形に創られた者で、高貴な王の娘なのだと。

「私は奉仕し、結婚し、夫と子どもたちに奴隷のように仕えるように育てられました。それが私の唯一の選択肢だと信じていたのです。イスラムの伝統や信仰を乗り越え、キリストの愛、つまり私を愛し、私の名前を知っておられる神の愛を知って、私は正しく自分を見るようになったのです。それには時間がかかりましたが、今私は、自分が完全に自由の子なのだと分かります」

サラの心は深い変革を経験し始めた。彼女は2017年に弟子訓練グループに参加し、主に仕え、イスラムから改宗した他の女性を助けるミニストリーのチームメンバーになったのだ。(続く)

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■ エジプトの宗教人口
イスラム 86・7%
コプト教会 11・6%
プロテスタント 0・9%
カトリック 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。