2022年10月20日22時27分

わが足のともしび 穂森幸一

コラムニスト : 穂森幸一

あなたのみことばは、私の足のともしび、私の道の光です。(詩篇119:105)

先日の夕方、知人に書類を届けようと思って町外れまで車で向かいました。車を降りたら、薄暗くなっていました。知人の在宅を確認しようと思って携帯を手にし、足を進めたとき、前のめりに転倒してしまいました。倒れた所がコンクリートだったため、体を激しく打ち付けてしまいました。帽子をかぶっていたため、頭部は保護されたようですが、それでも額に擦り傷ができていました。

家に帰ってから、なぜ歩きながら電話しようとしたのか、夜道を歩くのにライトも持っていなかったのかと家族に注意されましたが、弁解の余地はありませんでした。その夜はあまりの痛さに、起き上がって鎮痛剤を服用し、主なる神に痛みを取り去ってくださいと祈り求めました。その時に示されたのは、私の身代わりとして裁きの場で打ちたたかれ、十字架を背負ってゴルゴタの丘まで歩まれた主キリストの姿でした。キリストの受難に比べれば、私の打撲の痛みなど大したことないはずなのに、泣き叫ぶ弱い私がそこにいました。

米国の知人がSNSで送ってくれた言葉があります。"As long as you feel pain, you’re still alive. As long as you make mistake, you’re still human. As long as you keep trying, there’s still hope."(痛みがあるのは生きている証拠、失敗するのは人間の証拠、トライしようとする限り、希望がある)。自分の不注意を嘆く私を、知人は「自分たちも同じだよ。祈っているよ」とテレビ電話で慰めてくれました。

転倒した翌朝はモーニングセミナーがあり、講師を送迎する役目がありましたが、シップを貼ってしのぎました。またその後、遠方まで出かける用事があったのですが、何とか果たすことができました。

2日たっても痛みが緩和しませんので、心配になり、病院に行きました。レントゲンを撮り、医師に診察してもらいましたが、骨はどこにも異常はなく、擦り傷も大したことはないということでした。レントゲンの写真も見せてもらって、「この状況でひびも入っていないというのは良かったですね」と言ってもらえました。この時に示されたのは、詩篇の一節でした。

まことに主は、あなたのために、御使いたちに命じて、すべての道で、あなたを守るようにされる。彼らは、その手で、あなたをささえ、あなたの足が石に打ち当たることのないようにする。(詩篇91:11、12)

今は暗闇の時代に突入したと表現した人がいます。政治も経済も安全保障も、全く先が見通せない不安な時だと言われても仕方のない状況です。1ドルが150円近くなると誰が予測できたでしょうか。1ドル200円になってもおかしくないという経済評論家もいます。1ドルが80円の時、海外に行くといろんなものが安いと感じられましたが、今はその逆で、全てが高くて何も行動を起こせないという人がいます。

安全保障面でも不安を抱えて生きています。ロシアが侵攻してきて、生活の全てを破壊されたウクライナの人々の状況が、いつわが身に降りかかってきてもおかしくないといわれます。隣国のミサイルが日本上空を通過してJアラートに驚き、C国による台湾侵攻の際には、わが国も大きな影響を受けるというニュース解説に不安をかき立てられるのは、私だけではないはずです。

過去、現在、未来を一瞬にして見通すことができるなら、私たちの行動も変わってくるかもしれません。それができるのはイエスです。イエスの弟子たちがエルサレム神殿の建物の石の立派さに驚嘆しているとき、イエスの目には、その石がローマ軍によって崩されていくのが見えていました。未来を現実のこととして見れたのです。(マルコ13:1、2)

また、山上での変貌の出来事は、過去の出来事も現在とつながっていることの象徴ではないかと思います。「それから六日たって、イエスは、ペテロとヤコブとその兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に導いて行かれた。そして彼らの目の前で、御姿が変わり、御顔は太陽のように輝き、御衣は光のように白くなった。しかも、モーセとエリヤが現れてイエスと話し合っているではないか」(マタイ17:1〜3)。モーセは1500年前の人、エリヤは500年前の人です。しかし、時間を超越してイエスと話し合っていたのです。

たとえ闇の世界が迫ってきても、現在、過去、未来を超越したイエスが、私たちの足元を照らしてくださるなら、何も恐れることなく前へ進めます。

この地球上に何度も強力な独裁国家が現れ、権力によって一般民衆の生活を脅かす存在となりました。その一つがギリシャ帝国ですが、インドに到達しようというときに、病のためにアレクサンダー大王の夢はついえてしまいます。ローマ帝国が権勢を振るっても、地中海世界を支配したに過ぎません。秦の始皇帝でも、中国全土を治めただけです。日本を除くアジア全域を支配し、欧州にまで支配したのはモンゴル帝国です。数百年前の出来事なのに、欧州の人々にはこの時の恐怖がいまだに引き継がれているといわれます。

アッシリア帝国によって国土をじゅうりんされ、捕囚の身となった北イスラエルの人々の恐怖は、東の果ての島国までやってきても拭えないものだったのではないかと思います。だから、日本の文化に同化することで居場所を見つけようとしたのではないでしょうか。

一時、世界覇権を手に入れようとしたモンゴル帝国を押しのけたのは、日本でした。元寇は2回繰り返されましたが、鎌倉武士が防ぎました。中世期には、スペインとポルトガルとの間で、日本統治と植民地化の話し合いがなされましたが、戦国武将が跳ね返しました。私たちは、自分たちの国の歴史に誇りを持っていいと思います。日本人は自信を持って世界に挑み、平和の使者となるべきです。私たちの心に潜む恐怖心を取り除いてくださるのは、世の光であるキリストです。

しかし、あなたがたは、選ばれた種族、王である祭司、聖なる国民、神の所有とされた民です。それは、あなたがたを、やみの中から、ご自分の驚くべき光の中に招いてくださった方のすばらしいみわざを、あなたがたが宣べ伝えるためなのです。(1ペテロ2:9)

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穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

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