2021年6月29日19時41分

元エホバの証人との対話(1)証人となった経緯 山崎純二

コラムニスト : 山崎純二

元エホバの証人との対話(1)証人となった経緯 山崎純二
※ 写真はイメージです。(写真:jennyfriedrichs)

私が以前に働いていたコールセンターの会社には、エホバの証人の方々が多くいました。彼らは多くの時間を伝道に使うので、シフトを自由に調整できる仕事が彼らのスタイルに合っていたのだと思います。基本的には仕事を真面目にされる方が多かったように記憶しています。毎日仕事で接しながら、同じ聖書の神様を信じているけれど、一般の教会の方々とは少し雰囲気が違う彼らに対して興味がありました。

また、家に訪問に来た他のエホバの証人の方々と聖書について議論をすることもありました。その議論の中で、今まで自分の気が付かなかった聖書箇所について教えられることもありました。しかし、根本的にイエス様に対する理解が異なるのだなということを知りました。キリスト教にはカトリック教会、正教、プロテスタントなどさまざまなグループがありますが、いずれの教会も三位一体を根幹教理に据えています。すなわち神は父、子、聖霊という3つの位格でありながら、唯一の神であるということです。三位一体については、以前に「三位一体の神様」という連載もさせていただきましたので、詳しくはこちらも参照してください。

つまり一般のキリスト教会においては、イエス・キリストを子なる神であると理解しているのです。ところが、エホバの証人の方々の話を聞いていると、イエス・キリストは神ではなく、大天使ミカエルだと主張していることが分かりました。同じ聖書を読みながら、なぜこのようにまったく異なる見解に達してしまうのか、エホバの証人の方々はどのような信仰を持っているのか、彼らとはどのような対話が可能であるのか、私は若い頃からこのようなことを考えていました。

しかし、外部の立場から彼らを本当の意味で理解するのは容易ではなく、忙しさにかまけて、このようなことを考えることも少なくなっていました。ところが、最近になって元エホバの証人の方と親しくさせていただく機会を与えられました。この方は、証人として熱心に活動されていた方でしたが、ご自身でさまざまなことを調べ、学び、そして自ら「ものみの塔」と呼ばれる彼らの組織を出られて、今はキリスト教会に通っていらっしゃる方です。

この方といろいろな話をしているうちに、2人で対談をしたものを記事にすれば、単に外部からの一方的な決めつけでない、意義のあるものが書けるのではないかという話になりました。内容は聖書の教義に関する神学的なものから、証人として活動された体験談、そこからキリスト教会に通われるようになった経緯まで多岐にわたります。ですから今回から複数に分けて、対談をさせていただいた内容をもとに、連載を始めさせていただければと思います。まずは、彼が証人となられたきっかけについて聞いてみました。インタビュアーである私はY、今回証言してくださる元エホバの証人の方はHと表記させていただきます。

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Y)最初にエホバの証人となられたきっかけは何かありましたか?

H)親族のおばさんが証人から伝道を受けたことがきっかけで、母も勉強することになり、私もその影響で勉強を始めることに。それが小学6年の時で、聖書に関する基本的なことを学びました。それは聖書物語という挿絵付きの書物からだったので、教会で子どもたちが学ぶのと同じような内容でした。

Y)なるほど親戚や家族からの影響だったのですね。最初に神様に関する話や聖書について学んだ印象はどうでしたか? 比較的、特に抵抗を感じることもなくすんなりと信仰を受け入れたという感じでしょうか。

H)子どもながら、神様がこの世界を造られたことについてはすぐに納得しました。

神様が人を造られたが、罪を犯したから人類に罪が入り、永遠の命を与えてもらうにはイエスが人類の罪の身代わりになってくださったことを信じる必要があることは、教会と同じように教えられました。

当時は小学6年生ということもあり、素直に受け入れられたのかもしれませんし、最初のきっかけとなったおばさんが霊的に敏感でユタの家系だったので、エホバの証人になる前から霊的なことを追い求めていた影響が大きかったと思います。それ以前は親族で真光を信仰しており、もともと霊的なことを求めていたことも受け入れやすい要因だったと思います。

Y)小学6年生から証人となられたということですが、その後中学高校と進学する中で、学校の友達との間にギャップを感じることなどはありましたか。

H)小学6年生から学び始めましたが、集会に通い始めたのが中学2年生の時で、バプテスマを受けて証人となったのは、高校2年の時になります。中学の時はそこまでギャップを感じていませんでしたが、高校2年生からは明確に「クリスチャンなんだ」との認識がありました。

ただ、中学2年生から通い始めていましたので、一般の友達との距離感は割と近いものがあり、その関係を断ってまで証人との友人関係に絞るということはなかったです。高校時代はバンドも組んでいましたし、短大の時も好きな車で友達と遊びに行くこともよくありました。 その中で証人たちにも同じ年代の友人がたくさんいたので、そこでの友好関係もとても楽しいものでした。

Y)ありがとうございます。

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今回は第1回ということで、エホバの証人となられた経緯について伺いました。学生時代には特段の問題もなく、楽しい時期を過ごされたようです。ただ話を伺うと、その後の道は平坦ではなく、多くの苦悩や葛藤があったとのことです。具体的な内容は、連載を進めながら少しずつ話してくださると思います。

今回私たちが共同で記事を書かせていただく理由は、同じような葛藤や苦悩の中にいる方の助けになればとの思いがあるからです。また、キリスト教会や外部の方々が証人の方々に接するときに、彼らに対する理解を持ってほしいという思いもあります。時に私たちの立場から意見を言う部分も出てくると思いますが、そのような場合でも一方的にするのではなく、主の愛をもって相互理解につながる対話ができればと思っております。よろしくお願いいたします。

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山崎純二

山崎純二

(やまざき・じゅんじ)

1978年横浜生まれ。東洋大学経済学部卒業、成均館大学語学堂(ソウル)上級修了、JTJ宣教神学校卒業、Nyack collage-ATS M.div(NY)休学中。米国ではクイーンズ栄光教会に伝道師として従事。その他、自身のブログや書籍、各種メディアを通して不動産関連情報、韓国語関連情報、キリスト教関連情報を提供。著作『二十代、派遣社員、マイホーム4件買いました』(パル出版)、『ルツ記 聖書の中のシンデレラストーリー(Kindle版)』(トライリンガル出版)他。本名、山崎順。ツイッターでも情報を発信している。