2021年5月12日15時51分

アレサ・フランクリンを語り尽くす! クラブハウス用いた映画談議が大盛況

執筆者 : 青木保憲

アレサ・フランクリンの「アメイジング・グレイス」を収録した幻のライブ、49年経て映画に
©2018 Amazing Grace Movie LLC

5月28日から、Bunkamura ル・シネマほかで全国ロードショーされる予定の映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」のプロモーションの一環として、このコロナ禍ならではのイベントが次々と展開されている。

企画の発起人は、一般社団法人ビサイド・ミニストリーズの礒川道夫氏。クリスチャン映画を海外から日本にどんどん紹介し、伝道に役立ててもらいたいと願う熱い心を持った人物である。そして本作「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」の配給元であるGAGA(ギャガ)、また国内外のゴスペルシンガーやクワイアディレクター、そしてゴスペル団員の人たちも加わったことで、大きな盛り上がりを見せることになったのである。

事の発端は、筆者が礒川氏に「クラブハウス、使えますよ!」と声を掛けたことである。音声SNS「クラブハウス」の効用については、以前こちらに書いているが、その確信はさらに強くなりつつある。そんな中、今回の映画の話を聞きつけた筆者が「ぜひこの映画をクラブハウスで、みんなで話しましょう!」とアイデアの種をまいていたのであった。これが思いのほか大きな芽として姿を現すこととなった。

映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」とは?

本作は、1972年1月13、14日に米ロサンゼルスのニューテンプル・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたアレサ・フランクリンのライブを収録したドキュメンタリー映画である。サザン・カリフォルニア・コミュニティー聖歌隊をバックに歌い上げる往年のゴスペルソングの数々。その歌声のみならず、彼女のパフォーマンスを超えた「礼拝者」の姿勢に感動する聴衆の様子もまた、余すところなく収録されている。当時、これを「劇映画」として撮影していたのは、名匠シドニー・ポラック。映画「愛と哀しみの果て」で知られ、アカデミー賞を受賞している彼は、並々ならぬ意気込みで本作に取り組んだという。しかし残念なことに、音と映像をシンクロさせることができないというトラブルに見舞われ、現在のようなデジタル処理ができない時代であったため、未完のまま企画そのものが頓挫してしまったという。その赤裸々な様子もまた映像として収められている(映画そのものの評論は次回に取り上げたい)。

クラブハウスイベント「We Love アレサ!」

4月5日に行われた特別企画「We Love アレサ!」には、「われこそはアレサ・フランクリンの大ファン!」と名乗りを上げる多くの人々が集まり、何とその数40人を超えてしまった。本来なら、映画館で試写会を行い、そこに集まった皆さんに「ぜひ映画をご紹介ください!」となるのだが、コロナ禍のためそれもなかなかリスキーなことになってしまう。そこで発想の転換として、クラブハウスを利用していれば(現時点ではiPhoneユーザーで招待を受けた人、利用許可された人のみ)、誰でも参加できるハードルの低い(しかし志は高い!)イベントを企画したのである。試写会はオンラインで行い、その視聴者を中心に(もちろん試写を観ていなくても、アレサ・フランクリンが大好きなら誰でも参加可能)語り合うひと時となった。クラブハウスは、原則そこで話されたことは口外禁止というルールがあるため、詳細を述べることはできないが、離れていても「アレサ大好き!」「ゴスペル大好き!」を標榜する多くの人たちが、いろいろな視点からアレサ・フランクリンについて語り合うこととなった。

始まって数分で分かったことは、みんなアレサ・フランクリンが大好きということと、話し出したら誰も止められないということ。とにかくみんな話が長い!「短く話します」と最初に前置きする人ほど長かった、というのが私の率直な感想であった(笑)

そして何よりのビックニュースは、現在全米各地で「アレサ・フランクリン・トリビュート・ショー」を行っているチャリティ・ロックハートさん(彼女のことも以前幾つか記事を書いた)が途中からこのイベントに参加したことである。アレサ・フランクリンの私生活から舞台前のクセ、そして他のミュージシャンたちへの破格の待遇など、普通はなかなか聞けない「裏話」を聞くことができた。そして、正式にアレサ・フランクリンの家族からトリビュートアルバムに参加してほしいというオファーがあったことも明かしてくれた。いつの日か、彼女がこのアルバムを持って日本全国をツアーする日も近いだろう。

結局このイベントは、当初の1時間半の予定を大幅に超えて、2時間となってしまった。また、こうした企画をこれからも継続してほしいという声が礒川氏側に寄せられたという。そこで5月9日に、今度はアレサ・フランクリンのルーツをたどる企画として、黒人霊歌やゴスペルを生み出した奴隷制度また人種差別にまつわる映画を観て、それについて語り合うことで「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」を応援しようということになったのであった。そこで取り上げられたのが、次回紹介するスティーブ・マックイーン監督の「それでも夜は明ける」(2013年)である。

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■ 映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」予告編

■ 映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」公式サイト

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青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。