2019年7月4日14時25分

新・景教のたどった道(13)中国・高昌での景教壁画 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

中国の高昌での景教壁画

現在の中国の新疆ウイグル自治区トルファン付近に、漢代や唐代に栄えた高昌(コーチョ)都市があった。この地は中央アジアと中国、インドを結ぶシルクロードの重要地点で、仏教、マニ教、景教も盛んであった。『大唐西域記』を書いた玄奘がこの地を出発した630年にはまだ滅びていなかったが、帰りに訪れた640年にはすでに滅ぼされていたので、玄奘は高昌故城と書いた。

新・景教のたどった道(13)中国の高昌での景教壁画 川口一彦
新・景教のたどった道(13)中国の高昌での景教壁画 川口一彦
空から見た高昌故城

1905年の夏、ドイツの考古学者で探検家のル・コック(1860~1930)がこの地を発掘し、それを『Chotscho』として出版した。高昌故城にある景教徒たちの会堂跡壁画は有名である。

壁画には、キリスト・イエスが十字架にかけられる週の初め、ロバに乗ってエルサレムに入るとき、群衆が棕櫚(しゅろ)を持って迎えた日を記念したパームサンデー「棕櫚の日曜日」の様子が描かれている。絵にはロバの足の部分が見え、中国人風の3人が枝を、指導者らしき者が鉢を持ち、香炉を左右に振って香の煙を周辺に香らせている。

今日の東方正教会、日本ではハリストス正教会の礼拝で、神父が乳香を振りながら聖堂を白い煙で満たし、良い香りを会衆に香らせているのと似た光景である。

新・景教のたどった道(13)中国の高昌での景教壁画 川口一彦

ル・コック著『中央アジア秘宝発掘記』には、「この地にはシリア派キリスト教の小教団が方々にあった」とも記されている。佐伯好郎はほかに発見されたものとして、十字の記章を帽子に付け、十字を先端に付けた竿を持って馬に乗る人物の壁画も紹介している。絵の作者はグルン・ヴェーデルとしている。

新・景教のたどった道(13)中国の高昌での景教壁画 川口一彦

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※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
羽田亨著『西域文明史概論』(弘文堂書房、1931年)
ル・コック著『中央アジア秘宝発掘記』(木下龍也訳、中公文庫、2002年)
佐伯好郎著『景教の研究』([復刻]名著普及会、1978年)
THE CHURCH OF THE EAST, Christoph Baumer, 2006

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

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