2018年12月8日20時58分

なにゆえキリストの道なのか(172)天国は信じる者の心の中にある? 正木弥

コラムニスト : 正木弥

天国は信じる者の心の中にあるの?

天国といっても、人の心の中だけで心理的に存在するものにすぎないではないか、という質問ですね。それなら、「そうではありません」と答えましょう。

ご質問は、ルカ福音書17章20、21節から発しているかと思います。そこでのイエスの答えのポイントは、1)「神の国は人の目で認められるようにして来るものではありません」、2)「神の国は、あなたがたのただ中にあるのです」の2つにあろうかと思います。

1)については、当時のユダヤでは熱心党によるゼロターイ運動があって、ローマ帝国から武力で独立する政治的理想王国を目指していたのですが、それを否定した言葉であろうと解します。イエスのいう神の国は、目に見える地上の政治上の王国ではない、と答えたものでしょう。

2)については、“ただ中”は in ではなく within であって、“中に”というよりも“間に”というのが正しい意味ですから、「あなたがたの間にいるイエスに神の国がある」と言っているのです。

以上をまとめると、神の国はイエスが述べている十字架のあがないによって実現するものであり、地上の政治的独立運動が目指す理想王国ではない、という点を示唆するものでしょう。従って神の国を、人間の心の中で実現する心理的王国や、キリストによる人の心の支配・在り方と言おうとしたものではないと考えます。

特に注意すべきは、聖書は聖書全体で解釈すべきことです。神の国や天の御国、天国についての聖書の記述は、ルカのこの箇所を除き、場所的表示、外的状況として表示されているのです。そのことを正しく受け止めるなら、ルカのこの箇所も、心理的なもの、心の中の状況として解釈することは適当ではありません。

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正木弥

正木弥

(まさき・や)

1943年生まれ。香川県高松市出身。京都大学卒。17歳で信仰、40歳で召命を受け、48歳で公務員を辞め、単立恵みの森キリスト教会牧師となる。現在、アイオーンキリスト教会を開拓中。著書に『ザグロスの高原を行く』『創造論と進化論 〜覚え書〜 古い地球説から』『仏教に魂を託せるか』『ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書』(ビブリア書房)など。

【正木弥著書】
『仏教に魂を託せるか 〜その全体像から見た問題点〜 改訂版』
『ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書』
『ザグロスの高原を行く イザヤによるクル王の遺産』(イーグレープ)
『創造論と進化論 〜 覚え書 〜 古い地球説から』
『なにゆえキリストの道なのか』

【正木弥動画】
おとなのための創作紙芝居『アリエルさんから見せられたこと』特設ページ