2017年3月17日07時34分

キリストは弁護人 穂森幸一(79)

コラムニスト : 穂森幸一

「彼が民の悩む者たちを弁護し、貧しい者の子らを救い、しいたげる者どもを、打ち砕きますように」(詩篇72:4)

30年ほど前に長期研修のため米国に滞在することになりましたが、私は心配症だったために、異国の地で誤認逮捕されたらどうしようかとか、もし何かトラブルに巻き込まれたらどうしようかと思い悩んでいました。まず、現地の牧師に弁護士さんを紹介してもらい、名刺をいただきました。また、知り合いの警察官を紹介してもらいました。

この方々はとても熱心なクリスチャンで家庭にも招いてくださり、親交を深めてくださいました。「もし何かあったら、力になりますよ」と励ましてくださいました。この方々の名刺をいつも財布に入れて行動していました。幸い何事もなく研修を終え、無事に日本に帰ってきました。

私は旅行が好きで世界中どこでも出掛けて行きたい気持ちはあるのですが、何分にも気弱ですので、初めての都市を訪れるときは、そこでどなたを頼ったらいいのか情報を捜します。幸いなことに世界のほとんどの町に教会があり、「クリスチャンです」というだけで受け入れてくださいます。

また、初めての国を訪れるときは、税関の通過や乗り換えが心配で、旅行会社の方に空港の図面やバスの乗り場の図面を取り寄せていただき、図面上で何度もリハーサルを繰り返しました。そのおかげだと思うのですが、いつもスムースに移動ができました。

宿泊のためには予算の範囲でできるだけ良いランクのホテルを予約しました。立派なホテルは警備もしっかりしているし、旅行ガイド用のデスクがあります。そこで示された場所以外には近づかないようにしました。

どんなに慎重に行動したとしても、トラブルに巻き込まれてしまうことがあります。「日本の常識が世界では非常識」という言葉もあります。もしトラブルになったときは弁護人の存在がとても重要になります。

日本の裁判例を見ていても、1つの法律違反をするだけで何度も審問が繰り返され、裁判官の前で弁明しなければなりません。テレビなどで見ていると、当事者は「はい」か「いいえ」しか言うことは許されず、個人的な気持ちの釈明などは全て弁護士が代わりに行っています。

1つの違反でもこんなに大変なのに、神の律法は数え切れないくらい破っています。神の前に立たされたとき、どのような弁明を何回繰り返さなければいけないのかと思います。しかし、キリストは私の弁護を引き受けてくださり、神の前にとりなしてくださいます。

「しかし、キリストは永遠に存在されるのであって、変わることのない祭司の務めを持っておられます。したがって、ご自分によって神に近づく人々を、完全に救うことがおできになります。キリストはいつも生きていて、彼らのために、とりなしをしておられるからです」(ヘブル7:24、25)

聖書の中で、キリストが「もし、からし種ほどの信仰があったら、この山に、『ここからあそこに移れ』と言えば移るのです」(マタイ17:20)と教えておられます。イスラエル旅行に行ったとき、からし種の見本を入手し、瓶に入れていつも眺めていました。ゴマ粒よりも小さめの種子です。どんなに小さい信仰でも山は動かせるのだと安心していました。

ところが、ある時、気付きました。種子はどんなに小さくても命があります。命があれば、条件が整ったとき、芽を出し、大きく成長していきます。私の小さな信仰には命がないのではないかと思います。

「信仰が弱く、小さいと思っていましたが、命ある信仰はありません。信仰のない弱い私を救ってください」と弁護人であるキリストにとりなしていただくしかありません。

私は他の人々に「祈りは力です。祈りましょう」と勧めてきましたが、本当に祈りの必要な状況になったときは、祈りの言葉が出てこなくて、祈る気力すらない情けない自分の姿に愕然(がくぜん)とします。しかし、キリストは言葉にならない祈りを聖霊により受け止めてくださり、信仰のない弱い私を受け入れてくださいます。そして、御手を差し伸べ、「この手につかまりなさい。大丈夫です。前に進みなさい」と優しく導いてくださいます。

「御霊も同じようにして、弱い私たちを助けてくださいます。私たちは、どのように祈ったらよいかわからないのですが、御霊ご自身が、言いようもない深いうめきによって、私たちのためにとりなしてくださいます。人間の心を探り窮める方は、御霊の思いが何かをよく知っておられます。なぜなら、御霊は、神のみこころに従って、聖徒のためにとりなしをしてくださるからです」(ローマ8:26、27)

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穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

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