2016年10月14日07時06分

この希望は失望に終わることはありません 穂森幸一(57)

コラムニスト : 穂森幸一

先日、鹿児島で「ものづくりフォーラム2016」が鹿児島で開催され、株式会社植松電機専務取締役の植松努氏が「宇宙開発に『夢』託す北の町工場」と題して講演されました。

子どもの頃から紙飛行機が好きで、専門書を読んで設計の計算を電卓でやったりしていたそうです。紙飛行機の正確な設計はできるのに、算数は苦手で学校の評価は低かったそうです。また、目の左右の視力が異なるため、球技も得意ではなかったそうです。宇宙の夢を語っても周囲は相手にしてもらえなかったと話しておられました。

学校の先生に相手にされなくても宇宙への憧れは失うことなく、大学で流体力学を学び、航空機設計を手掛ける会社に入社しました。実家のある北海道に戻り、植松電機に入社します。産業廃棄物からの除鉄・銑鉄に使う電磁石の開発制作に成功します。そして、町工場としては特異なロケット事業を開始するに至ります。

ロケットの発射実験では何度も失敗を繰り返します。「失敗は挫折ではない、データの蓄積だ」と開発を続行し、ついには宇宙開発研究開発機構(JAXA)と共同で打ち上げ実験を実施するレベルに到達します。

現在、全国各地での講演やモデルロケット教室を通じて、人の可能性を奪う言葉である「どうせ無理」を無くし、夢を諦めないことの大切さを伝える活動に取り組んでいるといわれます。

私は植松氏の講演を聞いて感動し、涙が出てきました。ビジョンと信仰を持っていますとか、聖書の言葉を信じていると言いながら、「どうせ無理」とかネガティブな気持ちに陥る自分の姿を思い浮かべてしまいました。

「この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです」(ローマ5:5)

禅宗のある和尚さんが、日本の多くの人が「あきらめ」という言葉を誤解していると語られたことがあります。「物事を諦めていく」のではなく、「明らかにしていく」のが本来の意味だというのです。今まで暗闇で何も分からなかったが、そこに一筋の光が差し込んで、状態が分かってくるというのが「あきらめの思想」だそうです。

世の光であるキリストが先導されるときに、何を恐れる必要があるのでしょうか。ある宣教師はよく聞かれる「仕方がない」という言葉を使わないほうがいいと提言していました。

どの会社の経営にも谷あり山ありの状態があります。ずっと谷底を這っていますという会社もあるかもしれません。私の知人の経営コンサルタントが言うには、経営者が「もう疲れた、楽になりたい、辞めたい」と思ったら、その企業はアウトだそうです。たとえどんなにピンチが続いても、ビジョンを失わずに続行する意思があればセーフだと話していました。

夜、寝るときはどうしてもマイナスイメージが頭に浮かび、寝付かれなくなったりします。そういうときは自分に味方してくれた人、応援してくれた人に心の中で「ありがとうございます」と言うだけで平安な気持ちになります。ある伝道者が「夜は悪い者が支配し、朝は神様が支配されます。物事の決断は夜ではなく朝しなさい」と話したことがあります。

「神の恵みを一つ一つ数えなさい」という聖歌がありますが、過去を振り返れば、ピンチの中で神の恵みがあり、多くの人々の祈りと支えがあり、助けの手を差し伸べてくださる人がいました。そのことを思い起こせば「感謝あるのみ」です。今まで恵みを与えてくださった神が、これからも与えてくださらないはずがありましょうか。

これはある先輩が勧めてくださったことですが、「ハッピーノート」と「祈りのノート」を用意することで前向きになれるそうです。今日あった出来事の中でハッピーなことだけを記録するのが「ハッピーノート」です。そして「祈りのノート」には、お祈りしたことを何でも記録し、いつ祈ったか日時も記録します。そして、聞かれた日を書くスペースを空けておきます。そのほとんどの祈りが聞かれ、実現することに驚かされます。

「私は苦難の日にあなたを呼び求めます。あなたが答えてくださるからです」(詩篇86:7)

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穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

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