2015年9月13日21時47分

聖書をメガネに 戦前と戦後を結ぶ平和の絆、一人一人の存在と役割(その3)

翻訳者 : 宮村武夫

田畑忍編著『近現代日本の平和思想』で紹介されている「徴兵を拒否した矢部喜好」の項目を特別な関心を持って読み、深く感動しました。そのきっかけは、1970年代、青梅キリスト教会牧師時代に、矢部春夫人と個人的な交流があったからだと、前回報告しました。

春夫人と個人的な交流があったのは、春夫人が、日本基督教団の教会員で小学校教諭の大野久則兄と、青梅キリスト教会付属もみの木幼児園教諭の今井悦子姉の結婚を取り持ってくださったからです。それは、世代や教派を超えた見事な取り計らいでした。

悦子姉は、私たち夫婦が米国での留学から埼玉県寄居の教会に戻ったとき、まだ中学生で、ハイデルベルグ信仰問答を用いて一対一で学びを続け、キリスト信仰に導かれました。高校卒業後、女子聖学院短期大学に進学、私たちが転任していた青梅キリスト教会付属もみの木幼児園に就職したのです。

大野久則・悦子夫妻は、誰もが認める相思相愛の仲でしたが、私たちが沖縄に移った後、久則兄が若くして召されてしまいました。この深い悲しみの中でも、悦子姉は福祉関係の働きやボランティア活動を積極的に続け、やがて周囲の人々に押されて東京都福生市の市議会議員となり、その後20数年ひたすら地域に密着した平和思想の実践活動を続けてきたのです。

その間、宮本栄三先生同様、田畑忍先生の下で学んだ故土井たか子・元社会民主党党首から励ましを受け、現在は地域に根差しながら、地域を越えて、沖縄の西表島や石垣島の人々、さらに岩手の教会ネットワークとのつながりを大切にし、活動を続けています。

そうです、会津の矢部喜好少年から、滋賀の田畑忍少年へと伝達された平和思想のともしびは、埼玉の少女を通して西多摩で一つの実を結びつつあります。(続く)

(文・宮村武夫)

■ 戦前と戦後を結ぶ平和の絆、一人一人の存在と役割:(1)(2)(3)(4)