2026年7月25日17時36分

日本人に寄り添う福音宣教の扉(253)緊張感を持って教会連携を生み出す働きへ 広田信也

コラムニスト : 広田信也

日本のプロテスタント教会は、主に欧米諸国からの宣教師によって始められ、今でも100以上の教派に分かれています。さらに各教派には多くの地域教会が所属し、全国に約7千~8千カ所も存在するといわれています。

それぞれの地域教会には、所属する教派内や同じ地域内での交流が多少はありますが、基本的にそれぞれが単独で活動し、高齢化、核家族化の影響もあって、多くの場合、教勢が低下しています。

人々の行動範囲が拡大した現代社会ですから、対策のためには、広範囲の教団教派を超えた連携、交流が不可欠なことは確かです。しかし、聖書解釈のわずかな違いや受け継がれた伝統を根拠に、実質的な連携が進まないのが実情です。

同種の共同体は互いが敵になる!?

一般的に、タテ社会を構成する日本の共同体は、同じような種類と実力を持った者同士が敵になりやすいといわれています。例えば同業種の会社、店舗、学校、教会など、同じような集団が近隣にある場合、基本的にお互いが競争相手(敵)のような関係が育ちます。

日本の近代化においては、上記のような競争関係が、実は大きな貢献を果たしました。身近に競争相手がいることが刺激になり、日本の製品やサービスの品質が格段に向上したことは間違いありません。

ところが、ヨコ社会の人間関係を苦手とする日本社会では、同種の働きが連携して業界全体を発展させることが極めて難しい特徴を持っています。どこも同じようなことで競い合い、重箱の隅をつつくような働きに陥ってしまいます。発展性が乏しくなっても、お互いを補うような連携に至らない傾向が見られます。

地域教会においても、教勢が拡大しているときには、お互いが競争相手のような存在として発展しましたが、今では同じような課題を抱えていても、互いを支え合う連携に発展するのは難しいように思います。

企業内の取り組みは参考になる

私が所属したトヨタ自動車は、非常に大きな組織であり、構成される従業員は正社員だけで約7・2万人に達しています。これらの従業員が有効に業務を遂行できるように、社内にはたくさんの部署が存在し、それぞれの部署自体が絆の強いタテ社会を構成しています。

これら一つ一つの部署には、独自の技術や仕事の仕組みが培われ、それらが会社全体で連携することで優れた製品を生み出していることは間違いありません。

しかし、同じような種類と実力を持った者同士が敵になりやすいタテ社会の構造ですから、企業の中の部署であっても同じような現象が起こり、社内の業務連携が滞ることが頻繁に起こります。

優れた完成車を世に送り出す使命を持つ企業としては、これらの課題を乗り越え、部署間の強力な連携を常に維持しなければなりません。

そのために各部署のリーダーたちは、さらに上位のリーダーと共に膨大な時間をかけ、タテ社会を構成する各部署の立場を乗り越え、組織の活性化に取り組んでいるわけです。その現場には、かなりの切迫感、緊張感が満ちています。

このような企業努力は、製品やサービスを生み出す企業内だからこそできる面もあります。しかし地域教会も、タテ社会の中で生きる同じ日本人によって構成されていますので、日本宣教拡大を目指す上では参考にすべきことが多いように感じています。

地域教会間の連携を強める緊張感

これまでにも、日本宣教拡大を目指すさまざまな働きが展開されてきました。どの働きも、それぞれの働きのリーダーが地域教会の連携を得て働きを推進し、一定の成果を上げてきたと思います。

しかしどの取り組みも、私がかつて企業内で経験したものに比べると、地域教会の連携を求めようとする緊張感が乏しく、具体的な企画や対策を拡大展開していくことが難しいように感じています。

確かに、組織の活性化に取り組まなければ完成車両を量産できず、自らの存亡に関わる企業とは事情が異なるでしょう。しかし、同じタテ社会構造を持つ地域教会の連携を強くするには、必要に迫られた相当の緊張感が必要になると思っています。

助けを求める小さな声を共有すれば…

弱さの中で孤独を抱える人々に寄り添う「善き隣人バンク」の働きは、助けを求める小さな声が私たちに届けられることから始まります。

「心を込めてあなたのことを聴かせてください」と書かれたホームページのタイトルを見て、勇気を出して連絡を下さる相談者に対し、第一報を受け取る者、詳細を聴かせていただく者、継続的に寄り添う数人の対応者(訪問者)など複数人が協力して対応します。

これらの働きに携わるスタッフの多くはそれぞれ教団教派の異なる地域教会に所属し、背後にある教会では、常に「善き隣人バンク」の働きを覚えて祈り、支えてくださっています。つまり、助けを求める小さな声を共有することで、教団教派を超えた宣教がおのずと展開していることになります。

話を聴く現場では、相談者がリラックスして話ができるように気を遣っていますが、相手の心の痛みを背負う現場ですから、スタッフには常に緊張感があるものです。そのようなスタッフを支えるため、現場の状況を共有し、関わる者同士が連携する組織的な働きを展開しています。

現在のところ、相談件数は年間1500件程度ですが、潜在的な必要は極めて高く、今後信頼を得ることで大幅に相談件数が増えるようになるでしょう(現在はスタッフが不足しているため、広報を控えています)。

やがて地域教会が積極的に連携を求めるようになる

いまだゆっくりと展開する働きですが、日本宣教が「善き隣人バンク」を通しおのずと拡大することへの確信が日ごとに募っています。

強力なリーダーシップや特別なイベントもなく、助けを求める者に応え、教団教派を超えた信者が寄り添う働きが、徐々に、しかし確実に日本社会を変えていくことでしょう。

時間はかかると思いますが、やがて地域教会が地域の相談者に寄り添うために、教会連携を積極的に生み出す真剣な取り組みがおのずと始まるような気がしています。弱さを抱える人々の現場に寄り添うことで、宣教拡大に向かう緊張感が増してくることでしょう。

困難は多く、足りないことも多い現状ですが、皆様の応援、支援、祈りに支えられ、着実に歩ませていただく所存です。今後とも「善き隣人バンク」を、どうぞよろしくお願いいたします。

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広田信也

広田信也

(ひろた・しんや)

1956年兵庫県生まれ。80年名古屋大学工学部応用物理学科卒業、トヨタ自動車(株)入社。新エンジン先行技術開発に従事。2011年定年退職し、関西聖書学院入学、14年同卒業。16年国内宣教師として按手。1985年新生から現在まで教会学校教師を務める。88~98年、無認可保育所園長。2014年、日本社会に寄り添う働きを創出するため、ブレス・ユア・ホーム(株)設立。21年、一般社団法人善き隣人バンク設立。富士クリスチャンセンター鷹岡チャペル教会員、六甲アイランド福音ルーテル教会こどもチャペル教師、須磨自由キリスト教会協力牧師。関連聖書学校:関西聖書学院、ハーベスト聖書塾、JTJ宣教神学校、神戸ルーテル神学校