2026年1月22日22時45分

圧倒的な勝利者 穂森幸一

コラムニスト : 穂森幸一

しかし、私たちは、私たちを愛してくださった方によって、これらすべてのことの中にあっても、圧倒的な勝利者となるのです。(ローマ8:37)

ズームでつないだ国際祈祷会をしているとき、南アフリカの伝道者が「主よ、感謝します。2026年は私のものです」と祈っている言葉が聞こえて、思わずどきりとしてしまいました。大きなビジョンを掲げ、熱意を持って前に進もうとしている姿に、私が失いかけていることを示されたような気がしました。

「無理して頑張っても、あまり成果は出ないかもしれないから、自分の役割をそつなく無難にこなしていったらいいのではないか」というような心の思いを指摘されたように感じました。私が一人で頑張るのではなく、キリストが共にいて支えてくださるから前に進めるし、大胆なビジョンを描いても大丈夫なのだという決意を迫られました。

鹿児島県の種子島宇宙センターから通信衛星を積んだロケットが打ち上げられますが、時々失敗することがあります。何度も成功しているのになぜ失敗するのだとか、1千億円の損失だとか、ニュース解説で語られることがあります。実は、ロケットの製作には裏話があるそうです。

設計や製造の段階で最新のコンピューター技術やAIが導入されていますが、最後の仕上げの段階では熟練技術者の手の感覚が必要だというのです。どんなに熱と振動が加わっても緩まないネジとか、薄い合板の厚さの感覚とか、町工場の職人の腕にかかっているのだそうです。学者と職人のコンビネーションがうまく機能するときに成功するというわけです。

どんなに科学が進歩し、AI万能と言われても、人間に委ねられた感性の役割はとてつもなく大きいのです。感性は経験の中で研ぎ澄まされていきますので、年を取るほどに深められていくと言っても過言ではありません。

「世の中の動きを見たければ、マネーの流れを追いなさい」と語った経済学者がいました。第二次世界大戦においては、欧州もアジア各国も戦場になり、破壊が繰り返され、国土は荒廃しました。その中で無傷だったのは米国本土でした。

米国は戦争特需で莫大(ばくだい)な富を得ますが、さらに戦後復興の中で世界の工場としての役割を果たし、世界中の資産が米国に流れ込み、類を見ないほどのお金持ち国家になりました。

しかし、その中で公害の問題が発生しました。また、社会の矛盾を抱えて、さまざまな社会問題にも悩むようになり、ベトナム戦争に突入したことでさらに混迷を深め、大きな富を持ちながらも不安定な社会構造を生み出したのです。精神的な不安を抱える社会では、クスリに手を出す人が増え、社会秩序の崩壊が始まります。

米国に続いて世界の工場となり、戦後復興と高度経済成長を成し遂げたのが日本でした。朝鮮戦争とベトナム戦争の特需が追い風となり、国民総生産が世界2位という経済大国になりました。しかし、その中で四日市ぜんそく、水俣病などに代表されるような公害を抱えるようになりました。

私が学生時代に大阪にいたころは、スモッグと排気ガスのせいで空気が汚染され、淀川の堤防を散歩すると健康に悪いとまで言われました。経済的には成長しましたが、世界で日本人の品位が問われることがあり、エコノミックアニマルと呼ばれたこともあります。

半導体製造などが始まると、劇薬を使用するようになり、働く人の健康被害や排水などの環境破壊が問題になりました。企業は環境対策に莫大な経費をかけなければならなくなります。そのような中で、労働力が安価で環境基準が低いと言われる中国への工場移転に拍車がかかります。

さらに、中国は貧困のために社会不安があるが、経済が安定すれば政治体制も好転するだろうという西側諸国の勝手な思い込みで、技術移転や設備投資が世界各国から行われ、文字通りの世界の工場になったのです。独裁政権に世界の富が集中したことで覇権主義が強まり、世界各地での不安定要素を引き起こしています。

日本ではバブル崩壊後、空白の30年と呼ばれる経済低迷が続き、主要国の中で一番賃金の安い国と言われるほど、落ち込んでいます。物価の安さのせいか、アジア各国だけでなく、欧州や米国からも観光客が訪れ、有名な社寺の仲見世通りは込み合って、思いがけないインバウンド効果があるようです。しかし、本当の経済復興は製造業の回復から始まると思います。日本経済が眠りから覚める時は来ています。

マネーの流れを追って分かることは、富の集中は決して幸福を生み出さないばかりか、人間の欲と闘争心を助長し、社会の混乱を引き起こしているということです。結局のところ、富を手に入れても残るものはないのです。「恐れるな。人が富を得ても、その人の家の栄誉が増し加わっても。人は、死ぬとき、何一つ持って行くことができず、その栄誉も彼に従って下っては行かないのだ」(詩篇49:16、17)とある通りです。

現実の世界では、大国の論理、経済的強者の横暴、数を誇る勢力の言い分だけがまかり通っているように見受けられます。しかし、歴史の中で示されているのは、栄枯盛衰です。常に逆転の論理が働いています。キリストに従う者は、真の勝利者として残されていくのです。

わたしがこれらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平安を持つためです。あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです。(ヨハネ16:33)

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穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

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