東方シリア正教会の典礼(聖書に基づく神への奉仕、礼拝のこと)について述べていきたい。
シリア正教会はアンテオケに総主教座があり、一説に使徒ペテロが紀元39年に設立したとある。一方、トルコ東南のメソポタミアの地、シャンルウルファ(エデッサ)では、そこの王や周辺に住んでいたユダヤ人たちがメシア・イェシュアを信じ、共同体が初期に設立された。
そこで話されていたアラム語から、メシアの共同体のためにエデッサ方言として作られたシリア語が普及していった。そして、礼拝の様式が確立していく。
詩篇119篇164節に「私は日に七度、あなたをほめたたえます」とあるように、1日に7度の祈り――①一日の始めとされる日没の夕方の晩祷、②終祷、③夜中、④朝、⑤9時、⑥正午、⑦午後3時――をささげていたが、やがて1日に3度となった。
また、彼らが賛美するときや、指導者が祝祷するときには、腕組みしつつ聖書を朗読し、賛美と祈りをささげる。そのように、プロテスタント系諸教会やローマ・カトリック教会などとは異なった礼拝スタイルが特徴と言える。

祈りは、旧約の預言者イザヤ(イザヤ書6章)が天の神殿において栄光の主を拝したように、新約のイェシュアが山で栄光の御姿に変貌された(マタイ福音書17章)のを弟子たちが見たように、ヨハネが黙示録1章で栄光の主を見て、倒れて死にそうになったように、神の栄光を拝する者のうちに神への畏敬の念と聖性が満たされることがその目的である。
以下は、典礼の祈り。エルサレムの初代大司教で殉教者、使徒ヤコブが主イェシュアの口から学んだ祈り文とのことである。
平和の前の祈り
「万物の神、主よ、あなたの救いにふさわしくない私たちを救いにふさわしい者としてください。そうすれば偽りなく愛の絆で結ばれ、聖なる接吻をもって互いにあいさつし、あなた(父なる神)とあなたの独り子(イェシュア)とあなたの聖霊に栄光と感謝をささげることができます」
会衆「アーミン」
祭司「平和」
執事「ささげましょう」
祭司「ああ、あなたは唯一の慈悲深い主、高き所に住まわれ、最も謙虚な者たちを見守る方、あなたに頭を垂れた者を祝福される方、あなたの独り子と聖霊の恵みによって彼らを祝福してください。今も、そしてとこしえまでも」
会衆「アーミン」
祭司「父なる神よ、あなたは人類への大きな愛により、迷い出た羊たちを連れ戻すために御子をこの世に遣わされました。ああ主よ、血を流さない犠牲の奉仕を拒まないでください。私たちは自分の義ではなく、あなたの慈悲に頼るからです。私たちの救いのために定められたこの神秘(聖餐式)を、私たちの罪の裁きのためでなく、私たちの罪を消し去り、あなたとあなたの独り子と聖霊に感謝をささげるものとしてください」
執事「起立しましょう」
会衆「感謝します」
祭司「愛……」
会衆「そしてあなたの霊にも」
祭司「高き所で……」
会衆「そうです」
祭司「主に感謝をささげましょう」
会衆「それは当然なこと、正しいことです」
祭司「万物の造り主に感謝し、ひれ伏し、たたえることは、真実にふさわしく正しいことです」
「そして声を張り上げて言った。天の万軍が賛美する主に、有形あるいは無形の万物、太陽、月、全ての星、地と海、そして天のエルサレムに記された最初の子、天使、君主、権威、王座、主権、権力、多くの目を持つケルビム、顔と足を覆う6つの翼を持つセラフィムが互いに飛び交い、聖別し、叫んで言った」
会衆「聖なる……」
祭司「言った」
「まことにあなたは聖なる方、また聖となられる方。万物の主よ、あなたは御子、私たちの主イェシュア・メシアは聖なる方、あなたの奥義を探られるあなたの聖霊も聖なる方です。あなたは土から人を造られ、楽園に置かれました。しかし、彼らが戒めを破ったとき、あなたは彼らを迷わせることなく、預言者を通して彼らを導かれました。そして、終わりの時にあなたの御子を世に遣わされました。彼は聖霊によって処女マリアの体を得ることで、古びた姿を新しくされました」
■ シリア語による学び:ヨハネの福音書4章23、24節(右から左に読み書く)

23節の訳:しかし、真実の礼拝者たちが霊と真理で父を礼拝する時が来ます。今がその時です。なぜなら、父はさらにこのような礼拝者たちを求めておられるからです。

24節の訳:なぜなら、アロホ(神)は霊ですから、彼を礼拝する人たちは霊と真理で礼拝しなければならない。
(続く)
※ 参考文献
『Invitation to Syriac Christianity』(University of California Press、2022年)
川口一彦著『古代シリア語の世界』(イーグレープ、2023年)
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