2025年9月14日20時07分

キリスト教に回心したウィキペディア共同創設者、所属教会を発表

ラリー・サンガー
無料のインターネット百科事典「ウィキペディア」共同創設者のラリー・サンガー氏=2025年(写真:サンガー氏のウェブサイトより)

無料のインターネット百科事典「ウィキペディア」の共同創設者で、今年初めにキリスト教に回心したことを公表していたラリー・サンガー氏が、北米聖公会(ACAN)に入会する計画であることを明らかにした。

サンガー氏は長年にわたり、宗教に対して「懐疑的」な立場を取ってきたが、今年2月、クリスチャンになったことを公表し、その経緯をつづった長文の証しを自身のブログに掲載していた(関連記事:「今、私はクリスチャンです」 ウィキペディア共同創設者がキリスト教に回心)。

サンガー氏はその中で、自身のキリスト教に対する疑問が一つ一つ徐々に消えていったと述べ、特にクリスチャンたちのSNS上での振る舞いが、自身の見解に影響を与えたとしていた。2019年から聖書を本格的に読み始め、翌20年には「静かに、落ち着かない思いを抱きながらも」、神に立ち返ったという。

回心の公表から半年余りたった8月末、所属教会を探していたサンガー氏はX(旧ツイッター)への投稿(英語)で、9月にACANで堅信礼を受ける予定だと発表。ブログ(英語)では、聖公会の中でも、保守的な立場に立つACANを選んだ理由について説明した。

サンガー氏が、所属教会を選択する中で柱としたのは「聖書のみ」の信念、すなわち神に関わる事柄については、聖書こそが唯一信頼すべき情報源であるというプロテスタントの教義だった。

この信念により、「カトリック教会は比較的速やかに、正教会はややゆっくりと選択肢から外すことになった」という。これらの教派では、教会の伝統や公会議など、聖書以外の権威が重視されているためだ。

サンガー氏は、「カトリックの人たちを兄弟姉妹として尊重し愛していますが、多くの点で意見が合わず、それらの多くは究極的には『聖書のみ』にあります」と述べている。

その上で、ACANを選んだ理由について、「聖公会は神学的に最も真剣に取り組む教派の一つという卓越した評判」があるからだと説明。また、「教えが浅薄な教会」を批判し、それらは福音派の間で広く見られるとし、聖公会の知的信仰性と対照をなしているとも述べている。

典礼や聖書についての真剣な思索も、サンガー氏の決断における重要な要素だった。サンガー氏は次のように述べている。

「聖公会は典礼を真剣に受け止めています。古典的な祈祷書によって行われる典礼は、私自身が発見したように、極めて美しく、また霊感をもたらすものです。この点は、全てのクリスチャンにとってそうだと思います」

決断するに当たり、サンガー氏はあらゆる教派と伝統を検討し、それぞれの傾向、強み、弱みを考慮した上で、最終的にACANを選択したとしている。

「完全な教派というものは存在しません。しかし、私は長年の熟慮を経て、しぶしぶではなくむしろ熱意をもって、ACANこそが自分にとって最良の場だという結論に至りました」

サンガー氏が通っているのは、ACANの聖オーガスティン教会(オハイオ州ウェスタービル)。ACANの中でも、女性司祭を認めていない「生ける言葉教区」に属する。ACANでは、女性主教は認められていないが、女性司祭は教区によって判断が異なる。

ACNAは、同性婚容認や女性聖職の叙任拡大など、米国聖公会やカナダ聖公会のリベラル化に反発した保守派が2009年に設立した。聖書の権威と歴史的信仰を重んじ、結婚を男女間に限定し、伝統的な典礼を重視している。英国国教会や日本聖公会などが入る「アングリカン・コミュニオン」(全世界聖公会)のメンバーではないが、聖公会の保守派グループ「世界聖公会未来会議」(GAFCON)には入っており、一つの管区を構成している。ACNAの所属教会は2024年時点で1027教会、教会員は約13万人。