ミリアムは中東のある国で暮らす敬虔なイスラム教徒の女性だった。ところがある日、夫が衛星放送の福音番組を通してキリスト教に改宗してしまったのだ。大きな衝撃を受けたミリアムは、子どもたちを連れて叔父の家に身を寄せた。しかし、神からの働きかけは、彼女にも静かに始まっていたのだった。(第1回から読む)(登場する人物の名前は本名を伏せて変えてある)
叔父の家に滞在して数週間がたったある日、ミリアムはどういうわけか、心の内に「家に戻らなければいけない」という強い衝動に迫られた。叔父は戸惑いながらも引き止めず、彼女は子どもたちと共に元の家へと帰る決心をしたのだ。
夫の待つ家に戻ると、ミリアムは夫にキリスト教について尋ね始めた。夫はイエスについて語り、彼女に幾つかの福音放送のテレビ番組を勧めてくれた。ミリアムは少しずつキリスト教の教えに触れ始めたのだ。
「私が知っているイスラム教とは全く違っていて、最初は戸惑いと困惑の連続でした。祈りや断食の方法も違っていて、まだイスラム式の祈りしか知りませんでした」。彼女はそう語った。
そんなある日、ミリアムの信仰に転機が訪れた。まだ言葉を話せなかった末娘を昼寝させていたとき、突然その子が「イエス、イエス、イエス!」と叫び出したのだ。
「それは私にとって大きな出来事でした」とミリアムは涙ながらに振り返る。「その瞬間から、私は自分の人生を完全にイエスにささげようと決心しました。それから十数年、後悔したことは一度もありません」
家族は地元の教会に通い始め、信仰を中心とした新たな生活が始まった。ミリアムの心には不思議な平安が訪れた。しかし、その内なる平和とは裏腹に、彼らの平穏な生活は、長くは続かなかったのである。(続く)
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