2025年6月27日09時19分

ワールドミッションレポート(6月27日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(2)

執筆者 : 石野博

脱北した北朝鮮女性たちが、人生の痛みと苦しみの中でイエスに出会い、秘密裏に洗礼を受ける準備をしていた。違法行為に当たる信仰の告白であるにもかかわらず、彼女たちは涙とともに礼拝をし、ゆるがぬ決意と喜びをもって洗礼を受けたのだった。(※人物の名前は本名を伏せて変えてある)(第1回から読む)

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北朝鮮というような国で、このような集まりが実現したこと自体が、すでに奇跡であった。実際、洗礼式は開催できないかもしれなかったのだ。地域の治安が厳しくなり、警察の検問や私服警官の目撃情報が相次いでいた。

ある現地奉仕者はこう語る。「現地に行ったとき、想像以上に多くの警官が道路にいました。私服警官もいて、私たちは慎重に慎重を重ね、言葉も極力控えました。私たちは静かに祈り、信仰をもって進みました」

チームは状況を慎重に判断した上で、困難な決断を下した。注意深く安全を確認して、予定通りの集まりを行うという決断だ。翌日には、その地域を離れ、指導者訓練と贈呈式のために別の場所に移動した。関係者全員の安全のためである。

「彼女たちは、キノコや干し菜などをお土産として持ってきてくれました。とても謙遜な気持ちにさせられました。持っているものがほとんどない中で、彼女たちは心からささげたのです」。レイチェルは静かに説明した。

その日、洗礼を受けたばかりの女性の一人が立ち上がり、自身の体験を語った。「天のお父様を信じてから、全てが変わり始めました。私はもう一人ではないんです!」と彼女は力強く証しした。

式が終わると、女性たちはそれぞれの外国人家庭へと戻っていった。良い待遇を受けている者もいれば、虐待されている者もいる。誰もが自分の人生がこのような展開をたどるとは想像もしていなかった。しかし多くの女性は、「北朝鮮の過酷な生活に比べたら、今の生活に不満などあるはずがありません」と語る。

「特に今は、通貨の価値が下がっていて、北では生活がもっと厳しくなっています」と、ある女性は秘密の集まりで語った。長年の経済失策、国際社会からの制裁、パンデミックによる国境閉鎖などの影響で、北朝鮮の通貨ウォンの価値は大幅に下落している。

かつて1ドル=8千ウォンだったレートは、今や1ドル=2万3千ウォンとなっている。北朝鮮の一般的な労働者の月収はわずか数千ウォンであり、米1ポンド(約0・45キロ)の価格は現在4500ウォンほどで、2年前の倍近くに達しているのだ。(続く)

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■ 北朝鮮の宗教人口
無神論 69・3%
プロテスタント 1・3%
カトリック 0・1%
土着宗教 15・5%
仏教 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。