
ウクライナの伝道者で牧師のデイビッド・カルチャ氏が5月29日、ドイツの首都ベルリンで開催された欧州伝道会議で講演した。カルチャ氏は、戦争で荒廃したウクライナで力強いリバイバルが広がっているとし、戦時下でも福音は止まらないと強調した。
カルチャ氏は講演で、国が深刻な苦難に直面する中、ウクライナ各地の教会が希望のともしびとなり、何千人もの人々をキリストに導いていることについて語った。
欧州伝道会議では前日28日、米伝道者のフランクリン・グラハム氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と面会し、和平を求めて祈りをささげた(関連記事:フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り)。その翌日に行われたカルチャ氏の講演は、危機的な状況にあっても福音の力は色あせないことを示す会議のテーマを引き立てる形となった。
「平和な時、福音は力強い。しかし、戦争の時、福音は止められない」。カルチャ氏は講演の初めにそう言い、欧州各国から集まった参加者に対し、ウクライナの福音派教会を代表してあいさつを述べた。
カルチャ氏は、2022年2月にロシアが侵攻してきた際、ウクライナの福音派教会は、散り散りになって逃げるか、それとも国に残って同胞と苦難を共にするか、という重大な選択に直面したと語った。「計画があったからでも、準備ができていたからでもありません。信仰に基づいた行いは、最も小さなものでさえ、より大きなものの一部となると分かっていたからです」
また、ウクライナのキリスト教に関するニュースは今、宗教的な迫害ばかりが取り上げられているが、本当のニュースはウクライナにおける福音の広がりであり、多くの人々がキリストのもとに立ち返っていることだと指摘。ウクライナのバプテスト派教会では23年だけで、数千人が洗礼を受け、信仰を公に告白したことを挙げた。その上で、ウクライナの教会は、国中に広がる霊的な飢えに目を向け、物質的な支援だけでなく魂にも奉仕するという課題に立ち向かっているとした。
カルチャ氏は、戦争が始まってからこの3年間に、「数十万もの人々がウクライナの教会の門をくぐり、神の愛と慈しみに出会った」と言い、その多くが人生で初めて教会を訪れた人々だったと語った。また、難民としてドイツに逃れたウクライナの女性が、避難先の教会で食事やケアを受ける中で愛を示され、最終的にイエスを受け入れた事例もあったと話した。
カルチャ氏は、戦争が始まって以来、愛をもってウクライナを支援し続けてきた欧州中の教会に感謝の言葉を伝えた。
「キリストの体は、一つの国や国境に閉じ込められているのではなく、彼の民がいるところならどこでも生き、活動しているのです。真に助けを必要としている人々のために、キリストの手となり、心となってくださり、ありがとうございます」
「神は私たちに、神が既に働かれているところを見聞きすることを教えておられるのです。ウクライナの教会は最前線に立っており、塹壕(ざんごう)や戦場、病院でチャプレンとして奉仕し、戦火の中や絶望の場所で兵士たちに祈りとキリストの希望をもたらしています。私たちは、戦死した兵士の残された妻たちや、母親が二度と家に戻らない孤児たちのために、彼らの服を抱きしめ、悲しみを分かち合うためにそこにいるのです。私たちは、全てを失った人々、家ががれきと化し、家族が引き裂かれ、ロシア軍によってもたらされた言葉に絶する破片と苦痛によって体と魂が傷つけられた人々に、奉仕しているのです」
カルチャ氏は、これらの奉仕は全て、積極的に「聞く」ことから始まると話した。
「私たちは聞き、祈り、助けます。そしてどのように助けられるか、何ができるかが見えたとき、イエスについて語るのです」
カルチャ氏は、自身の教会に避難者としてやって来た50代半ばの物静かな男性について話した。当時は、多くの人が避難者として教会に来ていた。ある日、カルチャ氏に話したいことがあると申し出た男性は、幼い頃から神の存在を知っていたものの、数十年にわたり神から離れ、周囲の人たちにつらい思いをさせてきたと告白した。そして、キリストに自身の人生をささげる決意を表明したという。
「彼は泣き、涙を流しました。そして、私たちの目の前で新しく生まれ変わりました」。カルチャ氏は、神は今も働き、私たちの叫び声を聞き、救い、自身の子らをその故郷へと導いておられると語った。
「親愛なる兄弟姉妹の皆さん、これが、神が私たちの国で行っておられることのほんの一部です。神は教会を目覚めさせ、希望を必死に求める探求心をかき立て、そして私たちに、神が働かれるのを見聞きすることを教えておられるのです」
「神は、苦しみから証しを、恐怖から信仰を、小さな愛の行為から王国の種を育んでおられます。世界の目には、ウクライナは戦争の物語に見えるでしょうが、神の目にはリバイバルの物語であり、私たち全てに福音が及ぶことを思い起こさせる物語なのです。ミサイルが私たちの隣で爆発しても、キリストの基盤は堅固です。最も暗い夜でも、彼の真理の光は依然として輝いています。歴史は、十字架の前にひざまずくでしょう」
カルチャ氏はそう語り、それぞれが置かれた状況にかかわらず、大胆にイエスを主と宣言するよう励まし、メッセージを締めくくった。
欧州伝道会議は、ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)の呼びかけで、5月27日から30日までの4日間にわたりベルリンで開催された。「私は福音を恥としません。福音は、ユダヤ人をはじめ、ギリシア人にも、信じる者すべてに救いをもたらす神の力です」(ローマ1:16)をテーマ聖句に掲げ、55カ国・地域から牧師や宣教団体の指導者ら約千人が参加した。