2025年5月30日17時25分

ワールドミッションレポート(5月30日):ケニア 水浄化プロジェクト、アフリカ最大のスラムを変革し、大いなる救霊に(2)

執筆者 : 石野博

米テキサス州に拠点を置くバケット・ミニストリーは2000年から、安全な水を届けるための新しい手段として、浄水フィルターの配布に取り組んできた。(第1回から読む)

その取り組みの一環として、彼らはソーヤーフィルター社と提携し、バケツに取り付けるタイプのろ過装置を開発した。そしてケニアの最悪なスラム街キベラの水環境の改革に乗り出すべく、キベラの各家庭に、そのバケツタイプのろ過装置を提供するプロジェクトを本格化したのだ。彼らの使命は、神の像(かたち)につくられたこれらの人々の全家庭に、命を守る浄水フィルターを配布することなのである。

このろ過システムには、非常に細かいフィルターが設けられており、汚染物質は外側にとどめられ、内部からは安全な水だけが取り出されるという仕組みになっている。地域の住民から選ばれた100人の宣教師チームがフィルターの設置と使用法、そしてメンテナンス指導に当たっている。何より、彼ら自身がキベラの住人であったことから、住民との信頼関係も自然に築かれていったのだ。

当初、キベラの住民たちは懐疑的だった。これまで多くのNGOや人々がキベラにやって来たが、彼らは何の成果も上げられなかったからだ。だからバケット・ミニストリーも、他の団体と同じだろうと思っていた。ところが、フィルター配布から約70日たつと、目に見える成果が現れ始めた。

宣教師チームのリーダー、フィービー・ワフラは、「今では清潔で安全な水を通じて、多くの変化が生まれました。多くの病気が根絶されたのです」と語る。下痢や腸チフスなどの水由来の感染症が激減し、住民たちの健康状態が大きく改善されたのである。

プロジェクトは効果の追跡と管理にも工夫を凝らしている。各家庭にフィルターを配布する際、バーコードをスキャンして設置の記録を取り、住民の健康状態や信仰に関する情報も併せて記録するのだ。次回訪問時には再スキャンを行い、アップデートされた情報を蓄積していくのである。

ミッション・マッピング・ソフトウェアによって、配布状況や成果は地図上に視覚的に表示され、宣教師チームはその情報を基に活動の進捗を把握する。その結果、これまでに8万1777個の浄水フィルターが設置され、およそ40万8千人もの人々が清潔な水を利用できるようになった。

このプロジェクトの完成を祝して、最後にフィルターを受け取ったマイケル・ワンジョヒは「自分にとって、これは100パーセント奇跡です」と笑顔を見せた。だが、バケット・ミニストリーの使命は水の提供だけにとどまらない。

「われわれがここに来た第一の目的は、水ではありません。福音こそがその唯一の目的なのです」と、ミニストリー創設者のクリス・ベスは力強く語った。(続く)

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■ ケニアの宗教人口
プロテスタント 56・8%
カトリック 21・5%
英国教会 8・9%
正教 0・8%
土着宗教 7・2%
イスラム 8・3%
ヒンズー 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。