2025年5月19日15時59分

ワールドミッションレポート(5月19日):ベトナム 過去40年間で何十万人もが改宗したベトナムのモン族(1)

執筆者 : 石野博

ベトナム北部の高原地帯では、過去40年間、少数民族のモン族の改宗が尋常ならざる勢いで進んでいる。ベトナム北部の高地では、プロテスタント信仰はほとんど根を下ろしていなかったが、1980年代以降、状況は変わり、今ではベトナムに139万人いるモン族のうち、推定41万人がキリスト教徒となっているというのだ。

時がたつにつれ、彼らの改宗がもたらす社会的・経済的・政治的影響、つまり迫害や移住、生活様式の変化、さらには新しい男女関係の在り方に至るまで、それは無視できないものになりつつある。

現在、モン族は中国、ベトナム、ラオス、タイの国境地帯に約400万人おり、さらに米国やオーストラリアにもかなりの数の離散民が存在する。彼らが共有する民族的アイデンティティーは、同じ言語、同じ氏族の姓によって認めることができる。国家を持たず、複数の国に国境をまたがって存在するモン族は、ちょうどトルコやイラン、イラク、シリアにまたがって存在するクルド人に似ている。

1980年代後半にキリスト教が広まり始めたとき、驚いたことに、ベトナムの高地には、たった一人の外国人宣教師もいなかった。その代わりに、モン族の村人たちは、マニラからラジオ電波に乗って飛んで来るモン族語の伝道ラジオ番組に偶然出会っていた。自分たちの言語がラジオで放送されているのを聞いて大興奮したモン族のリスナーたちは、隣人や親戚にチャンネルを合わせるよう勧めたのだ。そしてなんと、その福音のメッセージは、モン族の間で野火のように広がっていったのである。

ところがベトナム当局は、モン族キリスト教徒の増加を否定し、反キリスト教的なプロパガンダを流布して、信仰の自由を制限することで対応した。西洋帝国主義との闘争の歴史を持つベトナム政府は、敵対的な外部勢力がキリスト教を推進することで、ベトナム人の共産主義信仰を揺るがし、ひいては戦略的に重要な中越国境地帯の社会不安を引き起こしていると非難したのだ。(続く)

■ ベトナムの宗教人口
仏教 52・5%
プロテスタント 2・0%
カトリック 7・7%
無神論 23・3%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。