米最大のプロテスタント教団である南部バプテスト連盟(SBC)は17日、教団内の性的虐待問題に関する調査や訴訟のための費用がかさむ一方、収入が減少している状況を踏まえ、財政を安定させるためにテネシー州ナッシュビルにある7階建ての本部ビルを売却する計画を発表した。
地元のテネシアン紙(英語)によると、本部ビルの売却は以前から検討されており、SBC執行委員会のフィリップ・ロバートソン委員長が同日、定例会議後に発表した。
テネシアン紙がナッシュビル開発計画局から引用したデータによると、本部ビルの資産評価額は2021年時点で3170万ドル(約45億円)だった。SBCは40年前、教団所属の8団体を収容するために800万ドル(約11億3千万円)を投じて本部ビルを建設した。元執行委員会議長のフランク・S・ペイジ氏によると、本部ビルは当時の日曜学校委員会(現ライフウェイ・クリスチャン・リソーシーズ)から寄贈された土地に建設された。
仲介業者らはナッシュビル・ビジネス・ジャーナル紙(英語)に対し、この土地は市内で最も発展し、注目されているナッシュビルヤード地区に位置するため、開発業者にとって魅力的だと語った。
SBCの関係者による性的虐待問題は、テキサス州の地元紙2紙による19年の調査報道によって明るみに出た。SBSは報道後、米調査コンサルティング会社「ガイドポスト・ソリューションズ」に独立調査を依頼。ガイドポスト社は22年、288ページにわたる報告書をまとめた(関連記事:元議長による性的暴行事案も 米南部バプテスト連盟、性的虐待の調査報告書を発表)。
それによると、SBCの指導者らは、性的虐待が疑われる事案を誤って処理したり、被害者やその支援者に不当な扱いをしたり、脅迫的な手段を用いたり、法的責任を回避する目的で、所属教会をより安全にするための改革に繰り返し抵抗したりしてきた。
「私たちの調査により、執行委員会の幹部数人と外部の弁護士が、虐待の報告に対する同委の対応を長年にわたってほぼ統括していたことが明らかになりました。彼らは、虐待の申し立てや訴訟に関する情報を厳重に管理し、それを同委の評議員らと共有せず、SBCの責任を回避することだけに集中し、他の考慮事項を排除していました」
「そのため、虐待を報告した被害者や関係者らは無視されたり、疑われたりしました。また、SBCは教会の自治に関する方針の故に、何一つ行動を起こせませんでした。たとえそれが、何の通知や警告もなく、有罪判決を受けた性犯罪者が教会の牧師として働き続けることを意味するとしてもです」
SBCの公式メディア「バプテストプレス」(英語)によると、ガイドポスト社による調査や訴訟費用、司法省の調査への対応などのために、SBCはこの3年間で計1210万ドル(約17億2千万円)以上を費やした。
内訳は、ガイドポスト社による調査費が200万ドル(約2億8千万円)、調査に対応するための法務・タスクフォースの費用が110万ドル(約1億6千万円)、ガイドポスト社に対する補償費が310万ドル(約4億4千万円)、ガイドポスト社による性的虐待通報窓口の運営費が86万1千ドル(約1億2千万円)、訴訟・事件管理費が240万ドル(約3億4千万円)、司法省の調査に関する費用が200万ドル(約2億8千万円)、顧問弁護士費が57万1千ドル(約8千万円)、調査後の法的支援が13万1千ドル(約2千万円)だった。
執行委員会はこの日、本部ビルの売却に加え、教団内の性的虐待問題に取り組む専門部門の設置も承認した(関連記事:教会内の性的虐待根絶を 米南部バプテスト連盟、専門部署設置へ)。