人が多く乗り降りしている駅なのに近くに教会がない。そのような駅がどこにあるかが分かれば、教会開拓の候補地を選ぶのに役立つのではないか――。教会開拓、宣教の一助にしてもらおうと、創立19周年を記念して、宣教第一主義を掲げるクリスチャントゥデイでは「教会と駅」というプロジェクトを立ち上げました。この記事では「教会と駅」の概要や使い方、また全国の「教会が近くにない駅」を洗い出すことで見えてくることを取り上げます。
◇
「教会と駅」の概要と使い方
「教会と駅」は、宣教予定地を考える際の参考情報を提供するために考案されたインターネット上の地図。インターネットに接続していれば、パソコンやスマホ、タブレットで誰でも利用できる。グーグルマップのように、見る範囲を自由に調節できるほか、パソコンであればコントロールキーを押しながらドラッグすることで、傾きを変えたり方角を回転させたりして視点を変えることもできる。
対象にしたのは、本紙で独自に情報収集した国内のキリスト教会約9500と、1日当たりの乗降者数が千人以上の駅。地図上に見える青色の棒グラフは、指定した距離内に教会がない駅で、オレンジ色の棒グラフは指定距離内に教会がある駅を示す。駅からの距離は500メートルから3キロメートルまで、500メートルごとに切り替えることができる。棒グラフの高さは乗降者数の多少を示し、高ければ乗降者数が多く、低ければ少ないことを意味する。高い青色の棒グラフの駅は、人の出入りは相対的に他の駅より多いが近くに教会がないため、近隣に新しい教会が立てられれば、多くの人が福音に触れる機会を作ることができる可能性がある。
地図の表示言語は、日本語、英語、韓国語の3カ国語に対応している。日本で教会開拓を志す海外の教会や宣教団体の人たちのために、特に宣教師の派遣数が多い米国と韓国で使われている言語として、英語と韓国語を優先した。
教会はすべてオレンジ色の丸印で表示される。駅から指定した距離内にある教会は濃いオレンジ色となり、駅とはオレンジ色の直線でつながれて表示される。
教会は位置のみ表示し、教派や教会名を表示しなかったのは、「すでにある教会」よりも「教会がまだない場所」に関心を持ってもらいたかったからだ。教派を表示させたり、教派別に表示を切り替えたりする機能は技術的に追加可能だが、「どの教派の教会もまったくない場所」の方が開拓しがいがあるのではないだろうか。また、教派に触れないからこそ、教派の違いを意識することなく、教派を超えて日本宣教について考え、対話することができるのではないだろうか。
棒グラフは、乗降者数の平方根に10を掛けた値の三次元対数グラフになっており、「高さ=乗降者数」ではなく「高さ=√乗降者数×10」となっている。乗降者数をそのまま高さにすると、1日約350万人が利用する新宿駅など利用者の多い駅は、棒グラフの高さが宇宙空間にまで到達してしまい、理解の妨げになると判断したからだ。対数を用いることで、乗降者数の多い駅は実際より低めに、少ない駅は高めに表示され、見やすくなっている。
1日当たりの乗降者数が千人以上の駅を対象にしたのは便宜上のためで、将来的には500人以上、100人以上、1人以上のすべての駅と、段階的に表示を切り替える機能の追加も検討している。なお、現在も駅名は千人未満の駅であっても表示している。また、駅と駅を結ぶ薄い青の線は路線を示す。
「教会が近くにない駅」の可視化で見えてくること
一般的な傾向として、駅からの距離を短く指定するほど青色の棒グラフが多くなり、長く指定するほどオレンジ色の棒グラフが多くなる。これは、駅からすぐの距離に教会を立てることの困難さを象徴している。また、教会も駅も線路もすべて都市部に集中していることがひと目で分かる。
大都市では、大型商業施設や空港に隣接した駅が青色の棒グラフ(近くに教会がない駅)になることが多い。確かに、空港乗り入れ用の駅の500メートル以内に教会を建築したり、物件を賃貸して教会としたりするのは難しいかもしれない。しかし海外では、空港に各宗派共有の礼拝堂があり、毎週日曜日にプロテスタントの礼拝やカトリックのミサが行われている例もある。空港内にキリスト教の礼拝が定期的に開催できる礼拝室が備えられれば、空港乗り入れ用の駅もオレンジ色の棒グラフに変わるだろう。
地方に行くほど路線は減り、車社会であることを感じさせるが、それでも線路と駅に目を向けると青色の棒グラフが点在していることが分かる。1日に千人以上が利用する駅なのに、なぜ近くに教会がないのか。この分析は各地方それぞれの事情を考える必要があるだろう。しかし大切なのは、教会が近くにない利用者の比較的多い駅がどこにあるかを知ることだ。知るのと知らないのとでは大きく違う。知ることで、その地の宣教を考え、祈ることができる。
ぜひ自分が住む地域だけでなく、さまざまな地域を確認してみてほしい。日本中の至る所に青色の棒グラフ、「近くに教会がない駅」を見つけることができるはずだ。
◇
2021年12月30日、「教会と駅」に未伝地をより高精度に可視化する新機能を追加しました。これにより人の住んでいる地域で教会が近くにあるところをオレンジで表示し、人が住んでいるのに近くに教会のない場所を青で表示することができました。人の住んでいる場所は日本全国を縦横100メートルのマス目に区切ってマス内の人口を推定したもので、東京大学空間情報科学研究センター西沢明特任教授と青山学院大学井上孝教授の「100メートルメッシュ人口」の研究を通して公開されたデータと教会との距離を計算したものです。各マス目と各教会の組み合わせ数とそれぞれの距離の計算回数は約475億回でした。
また、地図を拡大すると、人の済む地域を表すオレンジや青の各マス目が高さを持ったグラフとして見えてきます。このグラフの高さはそれぞれのマス目の中に何人の人が住んでいるのかの推計数を表したものです。一軒家だと低く、集合住宅だと高く表示されます。また、拡大した地図の右上には小さくマス目の推計人口を表示しました。推計人口は2010年の国勢調査を元にした推計と、2025年、2040年の推定人口が表示されます。
「教会と駅」は、教派別の表示切り替えや表示言語の追加、教会とバス停のつながり表示など、要望があれば機能追加も検討します。ご感想・ご意見は、[email protected] までお送りください。
また、クリスチャントゥデイの公式ブログでは、「教会と駅」開発のビハインドストーリーなどを伝える「教会と駅―情報技術が切り拓く日本宣教とキリスト教ジャーナリズムの展望」も掲載しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
クリスチャントゥデイは2002年の創立以来、多くの皆様に支えられ、5月20日で19周年を迎えることができました。これまで長きにわたり、ご愛読・ご支援いただき、誠にありがとうございます。本記事は、創立19周年を記念した特集記事の第2回です。第1回【中絶による悲しみに寄り添う 教会で見過ごされてきた心のケア】、第3回【歌舞伎町で夜回り3年、レスキュー・ハブの坂本新さん 「一歩踏み込んだ支援が必要」】もご覧ください。