2020年3月5日10時28分

新・景教のたどった道(28)唐代の漢訳書・その3「大秦景教三威蒙度讃」 川口一彦

コラムニスト : 川口一彦

大秦景教三威蒙度讃について

唐代8世紀ごろの作と考えられるものに、シリア語(別にソグド語の断片がある)から漢訳した景教徒たちの賛美歌「大秦景教三威蒙度讃(だいしんけいきょうさんいもうどさん)」があります。本書はペリオ探検隊が1906年からの敦煌莫高窟調査で発見した賛美歌で、シリア語から訳されたものでしょう。そして、著者が持っている中国語賛美詩には古賛美詩として曲がつけられて歌われています。

三威蒙度讃の「三」とは三一の神、慈父・明子・浄風のこと、「威蒙度」はシリア語のイムダァ(imuda)の音訳で洗礼を意味するとの説があります。三一の名において洗礼を授ける際に賛美した歌と言えます。他に三一の神による救いを賛美したとの説もあります。

字数は、7言が43句で、8言が1句、計309字となっていて比較的覚えやすい賛美歌と言えましょう。漢文と現代意訳を『景教』から引用しました。

新・景教のたどった道(28)唐代の漢訳書・その3『大秦景教三威蒙度讃』 川口一彦
『シルクロード大美術展』図録より(読売新聞社、1996年)
新・景教のたどった道(28)唐代の漢訳書・その3『大秦景教三威蒙度讃』 川口一彦
新・景教のたどった道(28)唐代の漢訳書・その3『大秦景教三威蒙度讃』 川口一彦
新・景教のたどった道(28)唐代の漢訳書・その3『大秦景教三威蒙度讃』 川口一彦

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※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教』
高橋英海「翻訳と文化間関係 シリア語とその周辺から」95-102 『精神史における言語の創造力と多様性』(慶応義塾大学出版会、2008年)
『シルクロード大美術展』図録より(読売新聞社、1996年)

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川口一彦

川口一彦

(かわぐち・かずひこ)

愛知福音キリスト教会(日曜と火曜集会)ならびに名古屋北福音キリスト教会(水曜集会)の宣教牧師。フェイスブックで「景教の研究・川口」を開設。「漢字と聖書と福音」「仏教とキリスト教の違い」などを主題に出張講演も行う。書家でもあり、聖書の言葉を筆文字で書いての宣教に使命がある。大学や県立病院、各地の書道教室で書を教えている。基督教教育学博士。東海聖句書道会会員、書道団体以文会監事。古代シリア語研究者で日本景教研究会代表。特に、唐代中国に伝わった東方景教を紹介している。著書に『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』など。