2018年9月23日19時43分

ブーゲンビリアに魅せられて(7)北朝鮮へラジオで発信―宣教に熱心な韓国 福江等

コラムニスト : 福江等

ブーゲンビリアに魅せられて(7)北朝鮮へラジオで発信―宣教に熱心な韓国 福江等
韓国からの留学生たちと共に=2004年10月ごろ、マニラの神学校のチャペルで

写真は、マニラの神学校で学んでいた韓国人の学生たちです。この神学校では、韓国人の学生が約3分の1を占めています。卒業後、外国に宣教師として出掛けていく人もたくさんいます。

現在、世界的に見ますと、宣教師の数は韓国が米国をしのいでいます。つまり韓国の教会は、世界で一番多くの宣教師を外国に送り出しているのです。この人たちの熱い信仰と宣教の熱心さには、目を見張るものがあります。

そんな学生たちの一人にイー・ヨンサブさんという方がいました。イーさんは奥様と2人の男の子を伴って入学してきました。イーさんはマニラの神学校に入るまで、韓国のテレビ放送局でアナウンサーをしていました。とても声のきれいな方で、歌も抜群に上手です。

この方が神学校で勉強している間に、一つの大きいプロジェクトを始めました。それは、北朝鮮に向けてキリスト教のラジオ番組を短波に乗せて発信するというものです。

イーさんは韓国の牧師たちに信仰のメッセージを録音してもらい、それをマニラの神学校にある放送スタジオで編集し、完成された番組をFEBCというアジア一帯に電波を飛ばしている放送局から北朝鮮に向けて発信するのです。

イーさんはこのようなビジョンを地道に実行に移していかれました。彼の努力によって毎日10分間のメッセージを北朝鮮に向けて発信できるようになっていきました。彼はむろん、北朝鮮に入国してその番組がどのように聴かれているか調査することはできませんから、何人かの人と一緒に中国を訪問し、中国と北朝鮮の国境の町まで行き、そこで北朝鮮の状況を調べてきました。

その国境の町には多くの北朝鮮出身者が住んでいて、さまざまな情報を入手することができました。それによると、当時北朝鮮は大変貧しく、子どもたちが食べる物がなくて市場の泥道に落ちているコメ粒やなにがしかの食べかすを拾って口に入れている状態であること、飢餓が想像をはるかに超えるほどに深刻であることなどが分かってきました。

現在では北朝鮮と韓国が融和ムードになってきて、歴史が大きく転換しようとしています。将来本当に朝鮮半島に非核化と真の平和が来ることを祈らずにはおれません。イーさんは2004年ごろから、聖書の教えを電波に乗せて毎日送り続けているのでした。いつか北朝鮮が真に開かれた国となって、自由に世界の人々が行き来できる日が来て、キリストの福音が浸透することを祈るばかりです。

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福江等

福江等

(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001~07年、フィリピンのアジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)、『天のふるさとに近づきつつ―人生・信仰・終活―』(ビリー・グラハム著、訳書)など。

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