2018年6月17日20時27分

牧師の小窓(136)「夜明けの祈り」を見て 福江等

コラムニスト : 福江等

どんな苦難も起こりうる世の中で、誰かのために祈る人に 鈴木秀子シスター推薦 映画「夜明けの祈り」
© 2015 MANDARIN CINÉMA AEROPLAN FILM / ANNA WLOCH

先日、「夜明けの祈り」という映画のDVDサンプルが送られてきたので、それを見てみました。教会員の1人からその映画についての新聞記事も頂いたので、それについて私の感想を述べてみたいと思います。

この映画は、実話を元にして描かれたもので、第2次世界大戦直後のポーランドの田舎の修道院で起きた事件です。ドイツ兵が敗退していった後からソ連兵が侵入してきて、この修道院でシスターたちを凌辱し、シスターたちが身ごもってしまうのです。

シスターたちはそのことを最初はひた隠しに隠し、ひたすら祈りをささげ続けるのですが、この事をどのように受け止めたらよいのか、神様の御心が分からなくて苦しむのです。修道院長もまた凌辱された1人でしたが、彼女は梅毒に罹っていることが判明するのです。

しかし、彼女はこのようなことが公になると、この修道院が閉鎖されてしまうと考えて、外の世界に対して秘密を守り通そうとするのです。そして、ついにシスターの1人が出産し、生まれた乳飲み子を取り上げて、秘密裏に森に捨てるのです。院長はもちろん苦しみましたが、それでも修道院をつぶしてはいけないという使命感から、そのような行動に出てしまったのです。

その前後に、あるシスターたちが医師の助けを求めて町の病院を訪ね、1人の若いフランス人の女医マチルドと出会い、マチルドが彼女たちを助けようとします。けれども、すべてを秘密裏に行うという条件をシスターたちが求めるために、マチルド医師は大変な責任を負うことになります。

やがて、シスターたちが次々と出産することとなって、シスターたちの苦悩が頂点に達します。生まれてくる子どもたちをどうしたらよいのか、どのような心で出産すればよいのか、神様の御心は何なのか、祈り求めるのですが、答えが出てこないのです。そして、皆心身ともに疲弊していくのです。

この映画は、人生の信じがたい不条理を前にして、信仰に生きる人々は神様の御心をどのように受け止めたらよいのか、という問いを投げ掛けています。最後に誰も考えてもみなかったような展開がマチルド医師を通して与えられるのですが、そこにシスターたちの苦悩の祈りの答えがあったと私は受け止めることができました。驚くような素晴らしい道が開かれたのです。ぜひご覧になってみてください。

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福江等

福江等

(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001~07年、フィリピンのアジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)、『天のふるさとに近づきつつ―人生・信仰・終活―』(ビリー・グラハム著、訳書)など。

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