2018年5月17日09時49分

異邦人の中で輝く光となる 穂森幸一(105)

コラムニスト : 穂森幸一

異邦人の中にあって、りっぱにふるまいなさい。そうすれば、彼らは、何かのことであなたがたを悪人呼ばわりしていても、あなたがたのそのりっぱな行いを見て、おとずれの日に神をほめたたえるようになります。(Ⅰペテロ2:12)

ある会社にお茶くみ要員と揶揄(やゆ)される女子社員がいました。彼女の仕事は会社にお客さんが来たら、お茶を入れるとか、コピーをとる、あるいは簡単な事務処理をするということでした。営業や企画などには関わっていませんでした。

ところが、彼女が寿退社してから、会社の営業成績が悪化していったのです。会社の首脳陣もいろいろ原因を探りましたが、原因は分かりませんでした。会社の幹部が彼女の自宅を訪ねて、何か思い当たることはないかと問うたのです。

彼女は次のように答えました。「わたしはただのお茶くみです。何もたいしたことはしていません。ただ私が心掛けていた些細なことがあります。それは誰よりも早く出社し、事務所の掃除をし、他の社員の机をきれいに片付けるようにしていました。また、お茶を入れなければなりませんので、茶葉を仕入れに行っていました。茶葉を仕入れてきたら、葉の部分と茎を選別しました。他の社員の方々が出社してこられたら、皆さんにお茶を入れます。顔色の悪そうな人がいたら、その人のお茶に茎を加えていました」

営業成績が思わしくなく落ち込んでいても、事務所が掃除してあり、机の上もきれいに片付いていたら気分が違います。そして、運ばれてきたお茶に茶柱が立ったら、何かいいことがあるかもしれないので、頑張ろうと思うのです。ちょっとした気持ちの変化が営業の成果につながるのです。

また、別の会社ですが、そこの事務所ではドリップ式のコーヒーを用いていました。コーヒーを入れるときの香りも楽しむことができました。ところが会社の幹部会議で経費削減が話題になり、文房具を安いものに変えたり、コピー用紙の無駄遣いを呼び掛けたりしました。コーヒーもドリップ式ではなくインスタントでいいのではないかという意見も出され、採用されました。

すると、社内の士気が下がり、半年後は事務所を閉鎖する事態に追い込まれたというのです。些細なことだと思われたことが、社員の士気に関わっていたのです。

その主人は彼に言った。「よくやった。良い忠実なしもべだ。あなたは、わずかな物に忠実だったから、私はあなたにたくさんの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ」(マタイの福音書25:23)

クリスチャンだから何か特別なことをしなければいけないと身構える必要はありません。小さなことをしてあげるだけで大きな働きにつながります。お茶1杯、または冷たい水1杯を差し出すことで最高のおもてなしになります。

これは米国の話ですが、ネットニュースで紹介されていました。ハイウェイパトロールの警官が、道端にホームレスがいるのを発見しました。彼は弁当を2つ買いに行って、道端でホームレスと一緒に食べたそうです。弁当をもらうだけでもうれしいのですが、話をしながら一緒に食べてもらったということで、ホームレスの方には大きな励ましになったそうです。

これは、私が神学校を卒業して鹿児島県の海沿いの田舎町の小さな教会に初めて赴任したときの体験談です。私が教会を留守にしていると、不思議なことが起こりました。いつの間にか礼拝堂が掃除してあり、庭の雑草が抜かれているということがありました。

ある時、予定より早く帰ってくると、1人の婦人が掃除をしておられました。その方にどうして留守の時に掃除をしたのかと尋ねますと、聖書の中でイエス様が「右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい」(マタイの福音書6:3)と教えておられますからと答えられました。

そして「掃除が終わったらベンチに腰かけて、教会に集われる方々に祝福がありますようにと祈るのが至福の時なのです」と話されたのです。私は真実のクリスチャンに出会ったと思い、目が開かれるような感じがしました。

日本のクリスチャン人口は全人口の1パーセントといわれて久しいのですが、隠れた小さな働きが世の光、地の塩となっているのではないかと思います。あるアンケート調査では、80パーセントの方々がキリスト教に好感を持っているそうです。

私たちの働きを誰も評価してくれなくても、小さな働きは神の前に届いています。必ずや社会の変革を生み出す糸口になります。

また、みことばを実行する人になりなさい。自分を欺いて、ただ聞くだけの者であってはいけません。(ヤコブ1:22)

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穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

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