2017年8月13日19時53分

英語お宝情報(14)言葉による意思疎通は料理と皿の関係に類似・その1 木下和好

コラムニスト : 木下和好

英語お宝情報(1):スピーキング脳とリスニング脳

By Dr. K. Kinoshita(木下和好)
YouCanSpeak 開発者・同時通訳者
元NHK TV・ラジオ 英語教授

<「言葉」と皿に盛った料理の関係>

レストランで何かを注文したとき、料理されたものがそのままテーブルの上に置かれることはまずない。必ず皿などに盛られた状態で運ばれてくる。皿は、料理を人に提供するために欠かすことのできない道具となる。家庭料理でも、インスタント食品でも皆同じだ。

実は、言葉も皿に盛った料理に似ている。皿に盛った料理は文字通り「皿」と「料理(食べ物)」の2つがセットになったものだが、実は言葉も2つの要素から成り立っていて、「皿」に当たる部分と「料理」に当たる部分がある。

英語お宝情報(14)言葉による意思疎通は料理と皿の関係に類似・その1 木下和好

言葉において「料理(食べ物)」に例えられる部分は、「イメージ」である。イメージは具体的には「思考・思い・発想・意思・感情・計画」などである。このイメージは、人間一人一人の脳中で造り出される。でもイメージが脳内にあるだけでは、それを他の人に伝えることができないので、イメージの伝達、すなわち意思疎通のための「皿」的な伝達手段が必要となる。それが音声(音声記号=音声言語)である。

音声記号とは具体的に言うと、日本語とか英語とか中国語などと呼ばれる音声言語のことで、固有の音の並び方を意味する。脳内イメージがそれぞれの言語の音声記号の「皿」に乗せられ、音の響きとして空気中に放出されたとき、初めて意思疎通が可能となる。

[脳内イメージを料理に例えると]

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[音声記号(音声言語)が皿の役割を果たす]

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<記号としての言語>

日本語とか英語とか中国語などは、「語」が付いているので、それら自体が「言葉」と思われているが、実は記号にすぎない。人が言葉を話すとき、すなわち頭に思い描くイメージを他人に伝えるとき、それは声帯と口の動きで「空気振動」に変換され、聞く人の鼓膜に届く。

この空気振動はあくまで「波形」であり「記号」である。なぜなら、空気振動自体には意味がないからだ。空気振動は「皿」の役割を果たすだけで「料理(食べ物)」すなわち「イメージ」そのものではない。イメージを脳内から外部に運び出す手段である。

この空気振動そのものには意味はないが、聞く人の脳の中で神経パルスに変換され、また「イメージ」に変換されたとき、初めて具体的な意味になる。もう少し詳しく説明すると、言葉を発した人の脳内のイメージ自体はそのまま脳内に残り、空中を飛んでいって直接聞く人の脳の中に入り込むのではなく、記号化された音声言語が聞く人の脳の中でイメージに変換されて初めて意思が伝わったことになる。

英語音声

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中国語音声

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日本語音声

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世界の音声言語はすべて意思伝達のための記号!

<言葉はパソコンによるデータ送信に似ている>

言葉による意思疎通は、パソコンのデータ送信と酷似している。というより、パソコンが人の脳の機能に似せて造られたと言った方が正しいかもしれない。

パソコンで素晴らしい写真を誰かに送信するとき、写真はパソコンの中ですべて電子信号に変換され、有線あるいは無線で相手のパソコンに届く。送信時にコード内、あるいは空中を移動するものは電子信号であり、写真そのものではないので、電子信号を受け取っただけでは、その写真を目にすることはできない。

でも、受け取る側のパソコンにその電子信号を写真に変換するソフトがインストールされていれば、画面に写真が映し出される。あたかも写真そのものが届いたかのように。でも、もし受信PCに送信PCと同じ写真変換ソフトがインストールされていなければ、電子信号を写真に変換することができないので、送られてきた写真は画面上に再生されない。

このように、電子信号は写真そのものではないので、写真がパソコンから別のパソコンに移動することはない。電子信号はあくまでも写真(料理)を送信するための伝達手段(皿)にすぎない。

[パソコン間の電子信号によるデータの送信・受信]

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[送りたい写真]
(言葉の場合は話者の脳内イメージ)

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[送信PCで電子信号に変換]
(言葉の場合は音声記号に変換)

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[受信PCで電子信号を写真に変換]
(言葉の場合は聞き手の脳内で音声記号をイメージに変換)

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この場合の写真は、お客様に提供する「料理(食べ物)」に例えることができ、電子信号は「料理を盛る皿」に似ている。

「料理と皿」のように、あるいは「写真と電子信号」のように、言葉も「イメージ」と「音声記号」の2重構造になっていることを理解しなければ、言葉の学習方法を誤ってしまう危険性がある。何年も学習しているつもりが、実はほとんど何も学習していなかったという惨事を体験することにもなりかねない。

言葉を覚えるということは、適切な料理(食べ物)を適切な皿に盛る作業のように、適切なイメージを適切な音声記号と結合させる作業を意味する。音声だけを学んでも、言葉を学んだことにはならない。また一つ一つのイメージに的確な音声が結合されない学びも、言葉の学習にはならない。

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木下和好

木下和好

(きのした・かずよし)

1946年、静岡県生まれ。文学博士。東京基督教大学、ゴードン・コーウェル、カリフォルニア大学院に学ぶ。英会話学校、英語圏留学センター経営。逐次・同時両方向通訳者、同時通訳セミナー講師。NHKラジオ・TV「Dr. Kinoshitaのおもしろ英語塾」教授。民放ラジオ番組「Dr. Kinoshitaの英語おもしろ豆辞典」担当。民放各局のTV番組にゲスト出演し、「Dr. Kinoshitaの究極英語習得法」を担当する。1991年1月「米国大統領朝食会」に招待される。雑誌等に英語関連記事を連載、著書20冊余り。

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