2016年8月29日06時50分

富についての考察(63)誰を信用したらよいのか? 木下和好

コラムニスト : 木下和好

私と家内は、命(ビジネス上の命も含む)がかかっているとき、人のアドバイスを無視し、自らの期待に全てかけることがある。2例を挙げてみよう。

1つは30年ほど前、米国から帰国し、英会話学校を始めたとき、周りの何人かが、その地域は外国人が大勢住んでいて皆こぞって英語を教えているので、畑はすでに荒らされており、経営を成り立たせるのは難しいだろうとアドバイスしてくれた。でもわれわれは、彼らのアドバイスを無視した。

また数年前にYouCanSpeakという英語スピーキングのeラーニングシステムを開発し、ビジネス展開を始めたときも、大半のビジネス経営者たちは、eラーニングはことごとく失敗しているから、経費倒れになる前に方針を変えた方がよいと助言してくれた。でもそのアドバイスも無視した。

無視した理由は、われわれの生活がそれらにかかっていることと、彼らのアドバイスに従って諦めたからといって、彼らがわれわれの生活を保証してくれるわけではないからだった。われわれは、ただ成功する方法だけを追求した。そして事態は好転した。

私は人々の助言や行動をどの程度信頼すべきかに関して、4つのレベルがあると思う。信頼度の低い順に言うと次のようになる。

① こちらの成否に何の影響も受けない助言者たち。彼らはただ単なる批評家である。われわれはいずれ、自分の蒔いた種は自分で刈り取ることになるから、批評家の蒔いた種まで刈り取る必要はない。

② こちらの成否に大きく影響されないが、こちらの成功だけを願っている人たち。医者や弁護士などはこのタイプに入る。親身になって相談に乗ってくれる友人たちもそうであろう。われわれは基本的にこれらの人たちを信頼するし、また信頼せざるを得ない。

③ 運命共同体的立場の人たち。私は飛行機に乗るとき、万が一の時のために心の備えをするようにしている。と同時に、パイロットを信頼する。なぜなら、乗客にとっての安全確保は、パイロット自身の安全確保でもあるからだ。それで乗客は、パイロットに100パーセント自分の命を託すことになる。

ビジネスの場合、win-win関係にあるかどうかである。何かが起こったとき、双方が得するか、あるいは双方が損害を被る状況にある場合、われわれは互いに信頼することができる。

この点の見極めができていないと、簡単に悪徳商法にひっかかってしまう。私たち夫婦は、最近ビジネスを展開していくとき、極力win-win関係だけを築き上げていくように心掛けている。

④ 最後にわれわれが最も信頼することができる人たちは、win-win関係を超え、友のために命を捨てる人であろう。命を捨てるまで行かなくても、自らに何の利益をもたらさなくても、友のために犠牲を惜しまない人たちである。すなわち、見返りを求めることなく援助をする人たちである。

私たち夫婦は、そういう人に出会ったこともある。友のために自分の命を捨てることよりも大きな愛はない(ヨハネ15:13)と聖書は言っているが、その極めが、羊(=人類)のために命を捨てたよい羊飼い(=キリスト)(ヨハネ10:11)であろう。

<<前回へ     次回へ>>

◇

木下和好

木下和好

(きのした・かずよし)

1946年、静岡県生まれ。文学博士。東京基督教大学、ゴードン・コーウェル、カリフォルニア大学院に学ぶ。英会話学校、英語圏留学センター経営。逐次・同時両方向通訳者、同時通訳セミナー講師。NHKラジオ・TV「Dr. Kinoshitaのおもしろ英語塾」教授。民放ラジオ番組「Dr. Kinoshitaの英語おもしろ豆辞典」担当。民放各局のTV番組にゲスト出演し、「Dr. Kinoshitaの究極英語習得法」を担当する。1991年1月「米国大統領朝食会」に招待される。雑誌等に英語関連記事を連載、著書20冊余り。

木下和好氏の書籍のご注文は、全国の書店、またはAmazonにて。

【公式】YouCanSpeak® 1977年から英語指導一筋・英語スピーキングに特化したオンラインプログラム