2011年3月4日11時51分

「聖霊体験をした人々」(1)・・・エリエゼル 平野耕一牧師

聖霊を体験したい。これはペンテコステ派の信仰者だけではなく、福音派信仰者にとっても熱い願いであろう。元々カリスマ運動はカトリック教会に端を発していることを考えると、聖霊体験を切望する人々は教派を超えていると言ってよい。旧新約聖書を通して、聖霊は体験すべきものとして描かれている。このコラムでは、聖霊の教えよりも、その体験に焦点を合わせて聖書を検証する。

・エリエゼル(創世記24:1~67)

エリエゼルは聖霊を体験した人物だが、同時に聖霊の働きの象徴でもある。創世記には三位一体の神の働きが描かれているが、アブラハムは父なる神、イサクは子なる神、エリエゼルは聖霊なる神を示している。

旧約時代は御父なる神の活躍された時代、福音書の期間は御子イエス・キリストの活動された時代、ペンテコステ以後から現代までは教会時代だが、御霊が働かれている時代であり、聖霊の時代とも呼ばれている。

御父は救いの計画を立ててその準備をされ、御子は救いを実現し、御霊は人々に救いをもたらすことと、教会を花嫁として整えてキリストの御前に立たせる仕事をされているのだ。御霊は全時代の全人類に救い、赦し、御霊の内住、聖霊のバプテスマ、御霊の実を結ばせることなど、クリスチャンに必要な恵みを提供しているが、クリスチャン生涯における聖めのプロセスに働いておられるのである。

エペソ5章27節には「しみや、しわや、そのようなものの何ひとつない、聖く傷のない教会を、ご自分の前に立たせるためです」とあるが、終末論が盛んに語られる緊迫した現在、再臨のキリストの前に立つための準備をされているのが聖霊である。

エリエゼルに象徴される聖霊の働き

1.エリエゼルがアブラハムの全財産の管理を任されているように、聖霊も御父から神の全所有の管理を任されているが、特に主イエスがいのちを与えて贖った神の子たちの管理を委ねられている。つまり、神の子たちの信仰と生涯は御霊の仕事になるのだ。

2.エリエゼルがアブラハムの命令によって花嫁を探しに行くが、聖霊も神の命令によって教会を求め、生み出し、整え、聖め、花嫁にするために遣わされているのだ。エリエゼルがアブラハムの願いを実現しようと働いたように、聖霊も御父の願いを実現しようと働いておられる。

3.御子の象徴であるイサクが花嫁を迎えるべき時が来たが、アブラハムは偶像崇拝の地カナン南部のベエル・シェバ付近からもカナンの地からも嫁を取ることを好まず、アブラハムの家族がしばらく滞在したユーフラテス川沿いの町ハランから嫁を探す決断をし、エリエゼルを花嫁探しに遣わす。

同じように、聖霊も花嫁を世俗の世界からではなく、霊的世界から選んでおられるのだ。また、エリエゼルが花嫁を見つけ出すだけでなく、整えたように、聖霊は今教会を整えておられるのだ。

花嫁探しに見られる聖霊の働き

1.聖霊はとりなしの祈りをする

エリエゼルはハランのナホルの町の井戸につき、そこで主人の願いに応えられるようにとりなしの祈りを捧げた。聖霊もこの世において御心が実現するようにとりなしの祈りをされる。

2.聖霊のタイミングは絶妙

エリエゼルのとりなしの祈りが終わる前に、祈りの答えが現れたのだが、見つかった花嫁はアブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘リベカであった。完全なタイミングで花嫁を探し当てたのだが、聖霊は「ちょうどその時」に働かれる。

3.聖霊は御心を確信する

エリエゼルがリベカを見、その行為を見て、イサクの花嫁となることを確信したように、聖霊の働きは確かなものなのだ。

4.聖霊は主の栄光を現す

「エリエゼルはひざまずいて、主を礼拝し賛美を捧げた。『私の主人アブラハムの神、主がほめたたえられますように。主は私の主人に対する恵みとまこととをお捨てにならなかった。主はこの私をも途中つつがなく、私の主人の家に導かれた』」(創世記24・27)。エリエゼルがすぐに主をほめたたえたように、聖霊は御父と御子の大いなる御業をほめたたえる。

5.聖霊は伝達する

エリエゼルは食事を出されたが、その前にアブラハムの意向を正確に効果的に、父親を失ったリベカの叔父ラバンに伝えると、すぐにラバンは「このことは主から出たことですから、・・・主が仰せられたとおり、あなたのご主人のご子息の妻となりますように」(同24・51)と答えたのだ。聖霊はメッセージを的確に伝える。

6.聖霊は祝福する

エリエゼルはリベカの叔父とその家族、リベカとその母と兄にすばらしいプレゼントを与えたが、同じようにクリスチャンが受ける御父と御子の祝福は聖霊によってもたらされるのだ。

7.聖霊の働きにはテンポがある

リベカの母と兄はエリエゼルに十日間の滞在を勧めるが、アブラハムとイサクを喜ばせたいので翌朝出発することを願うと、リベカの決断に任せられたが、彼女は「はい、まいります」と答えた。ついに最短の時間で目的を達するのだが、聖霊の働きもテンポよく無駄がないのだ。

8.聖霊は目的を実現する

エリエゼルはアブラハムから与えられた目的を実現した。キリストは地上に再び来られる。聖霊は教会を花嫁としてキリストに会わせて下さる。

ここにおけるエリエゼルの働きが具体的であったように、私たち現代のクリスチャンも具体的に聖霊を体験することができる。リベカとその家族に与えられた祝福を私たちのものとすることができるのだ。

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平野耕一(ひらの・こういち):1944年、東京に生まれる。東京聖書学院、デューク大学院卒業。17年間アメリカの教会で牧師を務めた後、1989年帰国。現在、東京ホライズンチャペル牧師。著書『ヤベツの祈り』他多数。