2026年7月28日16時19分

ワールドミッションレポート(7月28日):レバノン 中東最悪の刑務所に届く恵み─過激派の心を溶かす「関係性」の奇跡

執筆者 : 石野博

ワールドミッションレポート(7月28日):レバノン 中東最悪の刑務所に届く恵み─過激派の心を溶かす「関係性」の奇跡
レバノンの首都ベイルート(写真:SCHW / CC BY-SA 4.0)

中東で最も悪名高いとされるのがレバノンのルーミエ刑務所だ。本来は過酷な刑罰の場であるこの施設が今、驚くべき変革の舞台となっている。

スンニ派のソーシャルワーカーであるマヤ・ヤムートと、マロン派カトリック司祭のマルワン・ガネム神父。この2人は過去10年以上にわたり、刑務所の内側から過激派受刑者たちの「脱過激化(過激思想からの脱却)」という至難の業に取り組み続けてきた。

彼らのアプローチは異なるが、その成果は素晴らしい。マヤが関わった750人の過激派受刑者のうち、釈放後にテロリズムの世界に戻ったのはわずか10人に過ぎないという。

マヤのアプローチは、神学的な議論を真っ向から避け、トラウマを抱えた彼らの「尊厳」に寄り添うことだ。ヒジャブを被っていない彼女を最初は嘲笑していたある過激派の男は、彼女と一杯の茶を飲み交わし、長年の対話を重ねる中で深い悔い改めに導かれた。

彼は「人を殺すのは間違っている」と告白し、現在は獄中で他の受刑者が過激思想から抜け出すのを助けている。

一方、ガネム神父は獄中で「アブナ(父)」としての役割を果たしている。彼は医薬品や衛生用品といった実践的な支援を提供しながら「真の正義には責任と告白、そして修復が必要だ」という回復的司法のメッセージを語り続ける。

スンニ派とシーア派の受刑者間で暴動が起きかけたときも、神父は「君たちは皆、腹を空かせ、暑がり、助けを求めている同じ人間ではないか」と語りかけ、分断を鎮めてきた。

2024年にマヤが博士課程に進むため、レバノンを離れた際、「忍耐強く、彼らの人間性を忘れないでください」という言葉と共に、彼女はこの尊い働きをガネム神父に託した。スンニ派の女性とカトリックの神父によるこの美しい協力関係は、憎しみに満ちた独房において、極端なイデオロギーの壁を打ち破るのは議論ではなく「関係性」と「恵み」であることを力強く証明している。

ところが、神の恵みによって、私は今の私になりました。そして、私に対するこの神の恵みは無駄にはならず、私はほかのすべての使徒たちよりも多く働きました。働いたのは私ではなく、私とともにあった神の恵みなのですが。(Ⅰコリント15:10)

こう証言する使徒パウロの言葉が説得力を持って響く。どれほど深い暗闇の中にあっても、神の恵みは良心を回復させ、人々に二度目のチャンスを与えることができるのだ。

レバノンのルーミエ刑務所での働きのために祈ろう。ガネム神父をはじめ、受刑者たちの心に寄り添う働き人たちの上に、神の特別な知恵と忍耐があるように。過激な思想にとらわれていた受刑者たちの心に、キリストの愛と赦(ゆる)しが届き、彼らの人生が根本から造り変えられるように。

そして、宗教の壁を越えたこの愛の協力関係が、分断と紛争に苦しむ中東社会全体に、真の平和と和解をもたらすよう、祈っていただきたい。

■ レバノンの宗教人口
イスラム 59・0%
プロテスタント 0・6%
カトリック 23・9%
正教関係 7・3%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。