
自身のキリスト教信仰に基づき同性愛に否定的な見解を記した教会向け冊子を巡り、一部有罪判決を受けたフィンランドの元内相で現職国会議員のパイビ・ラサネン氏が、欧州人権裁判所に申し立てを行った。冊子の編集責任者であるフィンランド福音ルーテル宣教教区(ELMDF)のユハナ・ポージョラ監督と、発行元のフィンランド・ルーテル財団も申し立てを行った。3者の代理人を務めるキリスト教法曹団体「ADFインターナショナル」(英語)が24日、発表した。
申し立ては、フィンランド最高裁が3月、下級審の無罪判決を一部覆し、3者に有罪を言い渡したことを受けたもの。欧州人権裁判所への申し立ては、国内の最終判断から原則4カ月以内に行う必要がある。3者は、有罪判決が欧州人権条約で保障された信教と言論の自由を侵害していると訴えている。
ADFインターナショナルは、有罪判決後にラサネン氏に渡航上の不利益も生じたと説明している。同氏は6月に取得した英国の電子渡航認証(ETA)を7月に取り消され、ロンドンのヒースロー空港で乗り継げなかった。8月末に北アイルランドのベルファストで開かれる信教の自由に関する会議に出席できなくなることも懸念しているという。
この会議で基調講演を行う予定のラサネン氏は、「英国のような民主主義国で、『ヘイトスピーチ』による有罪判決を理由に、基本的自由について語る会議での発言を妨げられていることに、衝撃と深い皮肉を感じます」と述べた。
英国はETAの運用指針(英語)で、海外での有罪判決について、行為が英国法上も犯罪に相当するかを考慮するとしている。ADFインターナショナルによると、英当局は申請内容からETAの対象外と判断したと通知したが、詳しい理由は明らかにしていない。
フィンランド最高裁は、ラサネン氏が2004年に執筆した結婚と性に関する冊子について、「性的指向を理由に、同性愛者を一つの集団として侮辱する意見を公衆に提供し、かつ提供し続けた」として有罪を言い渡した。一方、同氏の所属するフィンランド福音ルーテル教会(ELCF)がプライドイベントの公式スポンサーになったことを、聖書箇所を引用して批判した19年のX(旧ツイッター)への投稿については無罪とした(関連記事:フィンランド最高裁、同性愛に否定的見解示した元内相に一部有罪判決 SNS投稿は無罪)。
ラサネン氏は、「私の訴訟は、信教と言論の自由という基本的人権が、フィンランドと欧州で今も守られているかを決めるものです」と述べ、その意義を強調している。