
フランスの国民議会(下院)は15日、不治の病を抱える成人に安楽死と自殺ほう助を認める法案を可決した。これを受け、フランス福音主義協議会(CNEF)は「深い悲しみと強い懸念」を表明。倫理的に重大な転換点だとして、緩和ケアへの一層の投資を改めて求めた。
法案は、不治で命に関わる病気を抱える一定の成人が、命を絶つための支援を受けることを認めるもの。元老院(上院)で繰り返し否決されたが、国民議会が最終的な議決権を行使する形で、賛成291、反対241で可決された。憲法院の違憲審査を通過すれば、法律として成立する。
CNEFは声明(フランス語)で、法案はフランスにとって「重大な倫理的・人間学的転換点」だと指摘。CNEFが3年以上にわたってこの問題に取り組み、「全ての人間の命は、その始まりから自然な終わりに至るまで、本質的で絶対的な価値を持つ」と一貫して主張してきたことに言及しつつ、自殺ほう助の合法化は、人間の命を意図的に絶ってはならないという長年の原則を弱めるものだと警告した。
声明はまた、法案を「友愛」という概念で語ることに強く異議を唱え、真の友愛とは、死を「早める」ことではなく、苦しみの中にある人に寄り添うことだと指摘。法案が成立すれば、高齢者や障がい者、重い病気を抱える人々が、家族や社会に過度な負担をかけていると感じるようになるなど、間接的な圧力を生じさせかねないと懸念を示した。
その上で、フランス政府は自殺ほう助を導入するのではなく、緩和ケアを受けられる機会の拡大を優先すべきだったと主張。終末期の人々を対象とした専門的なケアが、国内の多くの地域でいまだに利用できないことを指摘した。
今後、倫理的なジレンマに直面する可能性のある、特に福音派の医療従事者に対しては、「全面的な支持」を表明し、良心的拒否の権利を強力に保護するよう求めた。
また、フランス国内の福音派教会に対しては、牧会訪問など、終末期の人々への実際的な支援を強化するよう促した。
声明は、「今日、これまで以上に、私たちの地域共同体は、最も弱い立場にある人々に対し、希望と寄り添い、具体的な連帯の証人となるよう召されています」と結んでいる。
この法案は、エマニュエル・マクロン大統領が2022年に表明した「死への援助」への道を開くという公約を果たすもの。
法案の下では、「進行期または終末期にある重篤かつ不治の病」を抱える対象の成人が、処方された致死薬を自ら服用するか、身体的にそれが不可能な場合には医療従事者に投与してもらうことで、命を絶つことが認められる。
法案は世論調査では幅広い支持を集めているが、宗教団体や医療従事者、市民団体からは、弱い立場にある人々が、自ら死を選ばざるを得ないと感じる恐れがあるとの批判が上がっている。反対派は、自殺ほう助を認める代わりに緩和ケアへの投資拡大を求めている。