
国民の大多数がキリスト教徒であり、憲法で信教の自由が保障されている国がメキシコだ。しかし、この国が今年の「ワールド・ウォッチ・リスト」で30位にランクインしているという事実は、多くの人々にとって驚きかもしれない。
表面的な法律や数字の背後には、国家の統治能力を凌駕(りょうが)するほどに肥大化した麻薬カルテル(犯罪組織)の脅威と、古い伝統が支配する先住民コミュニティーという、信者たちを苦しめる2つの過酷な現実が横たわっている。
メキシコ全土にまん延する麻薬カルテルは、多くの地域で事実上の支配者として君臨している。その影響力は当局や警察にまで深く浸透している。そのような状況下で、実は最も標的にされやすいのは、麻薬や暴力から若者たちを救い出し、社会に真の平和をもたらそうと奮闘する教会の指導者や信徒たちなのだ。
カルテルにとって、人々に希望を与え、組織の支配から引き離そうとするキリストの光は、自分たちのビジネスを脅かす最大の「敵」と見なされる。脅迫に屈せず「悪に善をもって打ち勝とう」とする勇敢な牧師や神父たちは、身代金目的の誘拐、教会への襲撃、さらには暗殺という、恐怖支配をもくろむ暴力に日常的にさらされている。
昨年はキリスト教徒の殺害件数が、近年では最悪の結果を記録し、その暴力の形態はかつてないほど残忍さを増している。
一方で、メキシコ南部の先住民コミュニティーに住む信者たちは、全く別の種類の迫害に苦しんでいる。彼らは、精霊信仰やカトリックの儀式が混ざり合った「シンクレティズム(混合宗教)」の伝統に従うことを拒み、イエス・キリストと聖書だけに従うことを選んだ人々である。しかし、村の伝統的な儀式や祭りに参加しないことは「共同体への反逆」と見なされ、重い罰金、投獄、さらには住み慣れた家や土地からの追放という過酷な報復を招いている。
10歳のアリッサという少女は、この不条理な現実の中でこう証しする。「私たちは、彼らが期待する伝統通りの生き方をしないので、いつも拒絶されています。でも、神様は決して私たちを見捨てることはありません」。暴力と迫害の嵐が吹き荒れる中でも、神の守りを確信する彼女の言葉は、暗闇の中で輝く希望の光だ。
主イエスは言われた。
義のために迫害されている者は幸いです。天の御国はその人たちのものだからです。(マタイ5:10)
キリストへの愛と信仰を貫く故に、悪との癒着や妥協ができない真摯(しんし)な弟子たちが苦しんでいる。彼らのために祈ろう。
麻薬カルテルの暴力や脅迫がまん延する危険な地域で、命懸けで平和の福音を語り続けている教会指導者たちの上に、神の守りと力強い励ましが注がれるように。先住民コミュニティーで家や土地を奪われ、激しい差別に直面している改宗者たちに、決して見捨てられることのないキリストの励ましがあり、生活の糧が豊かに備えられるように。
そして、犯罪組織の背後にある暗闇の力が打ち砕かれ、不処罰のまん延するメキシコに、神の公正な裁きと真の平和が速やかにもたらされるよう、祈っていただきたい。
■ メキシコの宗教人口
カトリック 77・7%
プロテスタント 11・2%
無神論者 3・6%
土着の宗教 1・2%
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