2026年6月16日16時30分

ワールドミッションレポート(6月16日):トケラウ 沈まない木の箱─南太平洋の小さな環礁に届いた「母語で語りかける神の言葉」

執筆者 : 石野博

ワールドミッションレポート(6月16日):トケラウ 沈まない木の箱─南太平洋の小さな環礁に届いた「母語で語りかける神の言葉」
トケラウのアタフ島(写真:NASA Johnson Space Center)

南太平洋に浮かぶ3つの小さなサンゴ礁の島々からなる国トケラウ。人口わずか1500人ほどのこの孤島に、今、喜びと深い感謝、そして賛美の声が響き渡っている。

26年という途方もない祈りと忍耐の歳月を経て、ついに彼らの母語である「トケラウ語」の完全な旧新約聖書が完成し、奉献式が行われたのだ。この歴史的な瞬間に立ち会うために、島の人々はファカオフォ環礁に集い、長年の悲願であった「自分たちの言葉で語りかける神の言葉」との出会いに歓喜の声を上げた。

これまでトケラウの教会では、礼拝の言葉こそトケラウ語で行われていたものの、読まれる聖書は主に近隣のサモア語のものであった。年配の世代には理解できても、若い世代にとってその言葉はどこかよそよそしく、「神の言葉が自分たちから一歩遠いところにある」という何とも言えない違和感を生んでいた。

「私たちが家で話す普通の言葉で、神の言葉が語りかけてくれたら……」。その渇望に後押しされて、1996年から途方もない翻訳の旅が始まった。

最大の障壁は、トケラウ語が長らく「口承言語」であったことだ。翻訳チームは聖書を翻訳する前に、まず書き言葉としての文法体系を正式に確立するという、気の遠くなるような土台作りに取り組まなければならなかった。

翻訳者のイオアネ・テアオをはじめとする献身者たちは、一つ一つの言葉を心の言葉で紡ぎ出し、実に四半世紀にわたって一節ずつ翻訳を重ねていったのだ。

この並々ならぬ偉業は、国家全体をも揺り動かした。トケラウの議会は、翻訳チームを正式に表彰し、指導者たちは彼らに「トルマ」と呼ばれる伝統的な木の箱を贈った。それは、カヌーが転覆しても絶対に沈まずに海を漂い続ける特別な海事用の箱である。

指導者たちはこう語りかけた。「この聖書は、まさにこのトルマと同じです。どんなに激しい時代の波が押し寄せようとも、私たちの最も大切な言語と信仰を、絶対に沈ませることなく守り抜いてくれるからです」

借り物の言葉ではなく、心の一番奥深くに届く母語の聖書が完成したことで、この小さな島々の霊性は劇的に強められようとしている。

聖書は言う。

彼らは新しい歌を歌った。「あなたは、巻物を受け取り、封印を解くのにふさわしい方です。あなたは屠(ほふ)られて、すべての部族、言語、民族、国民の中から、あなたの血によって人々を神のために贖(あがな)い、(黙示録5:9)

子羊なるわれらの主イエスは、全ての部族、言語、民族、国民による賛美を受けるにふさしいお方だ。

南太平洋の小さな国トケラウのために祈ろう。完成したばかりのトケラウ語聖書が、1500人の島民全ての家庭に豊かに届けられ、若い世代が神の言葉を自分自身の「心の言語」として深く味わうことができるように。

この聖書を通して、彼らのアイデンティティーと信仰がキリストにあって一つに結び合わされ、島全体にリバイバルがもたらされるように。そして、いまだ自分たちの母語の聖書を持たない世界中の何千もの未伝道部族のために、翻訳者たちの働きが力強く前進し、全ての人が「自分の言葉で語りかける神」に出会えるよう、祈っていただきたい。

■ トケラウの宗教人口
プロテスタント 65・9%
カトリック 31・5%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。