2026年6月10日23時03分

ワールドミッションレポート(6月10日):バングラデシュ 権力の空白に潜む暴力─恐怖の中で御名を握りしめる者たち

執筆者 : 石野博

ワールドミッションレポート(6月10日):バングラデシュ 権力の空白に潜む暴力─恐怖の中で御名を握りしめる者たち
バングラデシュの首都ダッカ(写真:ASaber91 / CC BY 2.0)

バングラデシュは今、歴史的な転換点とその余波による社会不安のただ中にある。今年の「ワールド・ウォッチ・リスト」で33位に位置するこの国では、2024年のハシナ首相退陣後、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏率いる暫定政権を経て、今年2月に歴史的な総選挙が実施された。

この選挙ではバングラデシュ民族主義党(BNP)が圧勝し、同時にイスラム系政党も大きく議席を伸ばす結果となった。しかし、新政権の誕生が直ちに少数派への保護と平和をもたらしたわけではない。社会の構造的な脆弱(ぜいじゃく)性やイスラム主義的な影響力の高まりを突き、過激派組織がキリスト教徒や宗教的少数派に対して容赦ない暴力を向けているのが現在の痛ましい現実だ。

迫害の波は多方面から押し寄せている。とりわけ、民族的かつ宗教的少数派である「部族的キリスト教徒」は、二重の標的として絶え間ない脅威にさらされている。また、イスラム教やヒンズー教、仏教からの改宗者たちへの風当たりもすさまじい。

ミャンマーから逃れてきたロヒンギャ難民の中にも少数の改宗者が存在するが、彼ら改宗者は同じ難民コミュニティー内部から「死の脅迫」を受けるという、逃げ場のない過酷な苦難を背負っている。過激派の襲撃を避け、身を潜めて生活せざるを得ない信者も数え切れない。特に、大胆に福音を分かち合おうとする伝道者たちは、常に命の危険と隣り合わせの状況を余儀なくされている。

この政治的混乱のただ中で、迫害される女性たちに仕えるジョリナ(仮名)は、現場の深刻な状況を伝えている。彼女によれば、多くのキリスト者たちは強い圧力の下で生活しており、福音を語ることさえ制限されるような恐怖の中に置かれているという。

聖書は言う。

彼は言い争わず、叫ばず、通りでその声を聞く者もない。傷んだ葦(あし)を折ることもなく、くすぶる灯芯を消すこともない。さばきを勝利に導くまで。(マタイ12:19、20)

暴力で御名を封じ込めようと脅迫を強めれば強めるほど、暗闇の中でキリストに従い続ける彼らの強靭(きょうじん)な信仰は、かえって純粋な光を放っている。主は、傷んだ葦を折ることなく、くすぶる灯芯を消すことなく、必ず勝利に導かれるのだ。

バングラデシュのために祈ろう。政治的な過渡期に乗じて暴力を振るう暗闇の力が退けられ、恐怖の中で身を潜める兄弟姉妹たちが、神の絶大な守りの翼に覆われるように。ジョリナのような働き人たちに、力強い聖霊の平安と忍耐が注がれるように。

家族やコミュニティーから孤立し、死の脅迫に直面している改宗者たちが神の深い慰めを体験できるように。今年誕生した新政権の指導者たちに公正な知恵が与えられ、宗教的少数派を含む全ての国民に真の安全と平和が保障されるよう、祈っていただきたい。

■ バングラデシュの宗教人口
イスラム 89・0%
プロテスタント 0・5%
カトリック 0・2%
ヒンズー 9・1%
仏教 0・6%
土着の宗教 0・5%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。