2026年6月9日20時01分

ワールドミッションレポート(6月9日):米国 壁を超える福音─塀の中で広がる新しい命

執筆者 : 石野博

ワールドミッションレポート(6月9日):米国 壁を超える福音─塀の中で広がる新しい命
米イリノイ州にある旧ジョリエット刑務所の入り口(写真:Jacobsteinafm)

冷たい鉄の扉と分厚いコンクリートの壁に囲まれた刑務所は社会から隔離され、かつては暴力と深い絶望だけが支配していた。この米国の塀の中で、今、静かで力強い賛美の歌声が響きわたっている。

イリノイ州の刑務所では、受刑者たちがわずかに与えられた貴重な自由時間を手放してでも、礼拝に参加することを選ぶという驚くべき光景が日常となっている。この劇的な変化は「シティ・ファースト教会」が宣教団体「ゴッド・ビハインド・バーズ(鉄格子の向こうの神)」と協同し、刑務所の内部で完全に機能する教会キャンパスを開設したことから加速した。

これは同州において、塀の中に常設の教会キャンパスが設けられた歴史的な第一歩であった。

この働きの核心は、彼らを単なる「支援の対象」として扱わないことにある。アダム・シートン牧師は「私たちは彼らを外部の宣教対象とは見ていません。彼らは私たちの教会の、大切な会衆の一部なのです」と語る。

この「自分は受け入れられ、属する場所がある」という強い帰属意識が、施設の空気そのものを根本から作り変えている。

終身刑に服しているジェフリーという名の受刑者は、決して外に出られないという絶望の中で主に出会い、人を赦(ゆる)し、愛することを学んだと証しした。教会キャンパスの設立以来、既に千人以上の受刑者がキリストに従う決心をし、施設内では頻繁に洗礼式が行われている。最近行われた18人の合同洗礼式では、水の中から上がってきた一人の男性が、「全ての重荷が消え去った」と涙ながらに語り、魂の完全な解放を体験した。

さらに、この新しい命の連鎖は物理的な壁を越え、デジタル空間を通じて全米へと波及している。受刑者に支給されるタブレット端末に導入されたアプリを通じて、現在では50万人もの受刑者が福音のメッセージにアクセスできるようになった。

2021年以降、この革新的なデジタル配信を通して、実に6千人近くがキリストを受け入れる決断を下している。社会の目には「罪を犯した囚人」としか映らない人々を、神は「回復されるべき愛するわが子」として見ておられる。

牢につながれていた使徒パウロはこう言った。

この福音のために私は苦しみを受け、犯罪者のようにつながれています。しかし、神のことばはつながれていません。(Ⅱテモテ2:9)

人間の作ったいかなる堅牢な壁も、神の恵みの言葉が解き放たれるのを、決して押しとどめることはできないのだ。

米国の刑務所で起きている、素晴らしい救いの業のために祈ろう。社会から見放されたと感じている多くの受刑者たちが、キリストの無条件の愛に触れ、鉄格子の中にいながらにして真の自由と希望を見いだすことができるように。塀の中で新しい命に歩み始めた兄弟たちが、厳しい環境の中でも信仰を守り抜き、互いに愛し合うキリストの体として力強く成長していくように。

そして、刑務所内での直接的な礼拝や、タブレット端末を通じたメディア宣教に取り組む教会と奉仕者たちの上に、神の守りと豊かな祝福が注がれるよう、祈っていただきたい。

■ 米国の宗教人口
プロテスタント 約42%
カトリック 約21%
無宗教 約29%
ユダヤ教 約1%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。