2026年5月15日11時53分

ワールドミッションレポート(5月15日):カメルーン 彼らが命を奪っても、奪わなくても─絶望の地で歌い続ける

執筆者 : 石野博

ワールドミッションレポート(5月15日):カメルーン 彼らが命を奪っても、奪わなくても─絶望の地で歌い続ける
カメルーンの極北州にあるルムシキ峰(写真:Amcaja / CC BY-SA 3.0)

アフリカ大陸の西部に位置するカメルーンは、豊かな自然と多様な文化を持つ国である。しかし、この国の北部(極北州)は現在、世界で最も危険な地域の一つと化している。オープンドアーズの迫害国のランキング「ワールド・ウォッチ・リスト2026」において、迫害の圧力が劇的に高まっているカメルーンは37位にランクされている。

その最大の脅威は、国境を越えてナイジェリアから流入してきた「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)といった過激派組織である。彼らはキリスト教徒の村を無差別に襲撃し、教会や学校に火を放ち、信者たちを冷酷に虐殺し続けている。特に女性や少女たちは誘拐され、強制結婚や性奴隷の対象とされ、時には自爆テロの道具として使い捨てられるという、言語に絶する恐怖と暴力にさらされているのだ。

さらに信者たちを苦しめているのは、機能不全に陥った国家の現実である。政府や治安部隊は、こうした過激派による虐殺を食い止める力を失っており、ある地域では、驚いたことに、政府が教会の声を封じ込めようと弾圧を加えている。長引く暴力と終わりの見えない恐怖によって村々は破壊され、何十万人ものキリスト教徒が家と畑を追われ、過酷な難民生活を強いられている。

過激派の脅威から逃れ、山の上の岩肌や荒野に身を寄せているあるキリスト教徒のグループは、支援に訪れたオープンドアーズの現地パートナーにこう語ったという。

「私たちはもう、何も持っていません。家も、家族も、食べ物も奪われました。もし過激派が来て、彼らが命を奪っても、奪わなくても、私たちにはもう、すがるべき希望が何も残っていないのですから」

これは、極限の暴力の中で打ち砕かれ、生きる気力さえも削ぎ落とされてしまった人々の悲痛な叫びだ。しかし、現地の牧師や支援者たちは、この絶望に打ちひしがれた信者たちを見捨てることはない。「だからこそ、私は彼らのもとへ行き、神の言葉で彼らを励ますのです。決して彼らを見放しません。迫害にある同胞の痛みは私たちの痛みです」。ある現地パートナーは力強くそう語る。

物理的な家や財産、そして地上の希望が全て焼き尽くされたとき、最後に残るのは「神の言葉と永遠の神の約束」だけだ。過激派の銃声におびえながらも、彼らは見晴らしの良い荒野に集まり、小さな声で賛美歌を歌い、手に入れたわずかな聖書の言葉を命綱のように握りしめている。「主よ、あなたはどこにおられるのですか」という嘆きの祈りは、やがて「それでも、私たちはあなたに従います」という究極の信仰の告白へと変わっていく。

主はわが巌(いわお) わが砦(とりで) わが救い主/身を避けるわが岩 わが神。わが盾 わが救いの角 わがやぐら。(詩篇18:2)

究極的な状況で、彼らは神を避けどころとして身を寄せている。主はご自身に来る者を決して見捨てることはない。

カメルーンの信者たちのために祈ろう。全てを失い、絶望の縁に立たされている極北州の避難民たちに、主の力強い励ましと慰めが注がれるように。誘拐され、今も過酷な環境にとらわれている女性や少女たちが一日も早く救出され、その心と体の傷が主の御手によって完全に癒やされるように。

そして、死の危険を冒して彼らのもとへ向かい、共に祈り、御言葉を届け続ける現地の牧師やパートナーたちが、砦で岩なる主の中に守られるように祈っていただきたい。

■ カメルーンの宗教人口
プロテスタント 23・3%
カトリック 23・4%
イスラム 26・0%
土着の宗教 18・9%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。