2026年5月11日18時24分

ワールドミッションレポート(5月11日):独裁政権崩壊後、先の見えぬシリアのために祈ろう

執筆者 : 石野博

ワールドミッションレポート(5月11日):独裁政権崩壊後、先の見えぬシリアのために祈ろう
シリア北部の都市アレッポ(写真:Vyacheslav Argenberg / CC BY 4.0)

中東の十字路に位置し、古くから聖書に関わる豊かな歴史を持つのがシリアだ。しかし、この国が経験してきた過去十数年は、人類の近代史においても類を見ないほどの破壊と悲劇の連続であった。

2011年の反政府デモに端を発した凄惨な内戦は、およそ30万人超というあまりにも多くの尊い命を奪い去った。美しい国土は無残な焦土と化し、数百万人が国内外に逃れることを余儀なくされ、難民や国内避難民として今も過酷な生活を強いられている。

しかし、そのシリアに、大きな歴史的転換点が訪れている。長年にわたって国を強権的に支配してきたアサド政権が2024年についに崩壊し、現在は2025年から2030年までの国家運営を担う「暫定政府」が樹立されているのだ。

長きにわたる抑圧的な体制の終焉は、確かに一つの時代の終わりを告げる出来事であった。だが、シリアの人々にとっては、それが直ちに、平和と自由の到来を意味するわけではなかった。

戦争に疲れ果てた国民の前に重くのしかかっているのは、この新しい政府が最終的にどのような統治を行い、どのような形態のイスラム教を国政に推進していくのかという、先の見えぬ深い不確実性なのである。

この政治的な不確実性は、シリアに踏みとどまっているキリスト教徒たちにとって、文字通り死活問題となっている。現在の暫定政府を率いる指導者や、その内部の多くの有力者は、強硬なイスラム主義者との強いつながりを持っているとされている。

政権交代によって抑圧が終わるという淡い期待とは裏腹に、実際には、国の多くの地域で、キリスト教徒に対する激しい迫害が今もなお続いている。戦火を逃れて国外へ脱出する信者が後を絶たない中、この地に残された少数派の信者たちは、政治体制が変わってもなお、信仰の故に命の危険と隣り合わせの過酷な日常を生きている。

終わりの見えない動乱と喪失の中で、シリアの地を重く覆っているのは「深い絶望感」である。家族を失い、家を失い、未来への見通しすら立てられない人々にとって、地上の政治や人間の力による解決への期待はとうの昔に尽き果てている。

しかし、そのような暗闇と絶望のただ中だからこそ、決して揺らぐことのない希望、キリストの福音がかつてないほど必要とされているのだ。迫害の嵐の中で信仰を守り抜く少数のクリスチャンたちは、全てを失った人々に「永遠の希望」を指し示すために、そこに残されているのである。

砕かれた者たちへの励ましと希望、聖書は力強くそれを告げる。

主は心の打ち砕かれた者の近くにおられ/霊の砕かれた者を救われる。(詩篇34:18)

戦争によって完全に疲弊し切ったシリアの地と、長く苦しんできた人々のために祈ろう。新しい暫定政府の下で、なおも迫害の脅威に直面しているキリスト教徒たちが守られるように。深い絶望に打ちひしがれている多くのシリアの人々が、真の救い主に出会い、キリストの福音を信じることができるよう祈っていただきたい。

■ シリアの宗教人口 ※内戦前統計
イスラム教 90%
プロテスタント 0・2%
カトリック 3・1%
正教会系 3%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。