2026年5月3日16時45分

ワールドミッションレポート(5月3日):北朝鮮 人身売買と20年の孤独─変えられた脱北女性②

執筆者 : 石野博

北朝鮮、キリスト教の十字架に似た模様ある全ての製品を輸入禁止
(写真:John Pavelka / CC BY 2.0)

幼い頃に中国へ人身売買され、言葉が通じない中国人男性と強制的に結婚させられた脱北女性のソンミ。北朝鮮出身の女性に教会に誘われた彼女は、一度は教会に足を踏み入れたものの、北朝鮮への強制送還を恐れるあまりすぐに遠ざかってしまった。そんな彼女は、不安と深い孤独の中にいた。(第1回から読む)

ある日、彼女に運命を永遠に変える出会いが訪れた。脱北者を密かに支援している、ある宣教団体の奉仕者との出会いだ。その奉仕者は、ソンミを見つけ出し、自分の教会へと招いた。

不法滞在という身分から、最初は激しく警戒し、人との関わりを極度に避けていた彼女だったが、その心を開いたのは、言葉巧みな説得ではなく、その奉仕者の真摯(しんし)な人格だった。

「私は、その奉仕者が他の北朝鮮の女性たちに対してどれほど誠実に仕えているかを見ることで、徐々に、キリスト者として生きるとはどういうことなのかを本当に理解し始めたのです」と、ソンミは当時を振り返る。

その働き手は、見つかれば自分自身も投獄される危険があるにもかかわらず、危険を顧みずにソンミの元を定期的に訪問し続けた。そして、彼女が自らの言葉で聖書を読めるように、根気強く学びを助けたのだ。決して見返りを求めず、ただ純粋な愛と犠牲をもって接してくれるその無私の愛に触れたとき、彼女の心の壁は崩れ去った。そして彼女はついに、イエス・キリストを自らの個人的な救い主として受け入れたのである。恐怖と孤立に縛られていた彼女の心に、劇的な変化が訪れたのだ。

「信仰の決意をするとキリストが私の心に入ってこられました」と彼女は涙ながらに語る。「中国での20年間、ずっと孤独と恐れの毎日を生きてきました。誰も信じられず、頼れるものもありませんでした。しかし、主を知ることができた今、私の心は言葉にできないほどの喜びで満ちあふれています。なぜなら、今の私には、決して見捨てないイエス様がご一緒にいるからです。それに神の家族も与えられました」

キリストを信じて、魂の自由と霊の家族を見いだしたソンミ。しかし、彼女の物語はそれだけでは終わらなかった。

現在、彼女はかつての自分と同じように、強制送還の恐怖に震え、人目を忍んで孤独に生きている他の北朝鮮人女性たちに福音を伝え、助ける働きに、自ら加わっている。最も虐げられ、声を持たなかった孤独な女性が、今やキリストの愛を運び、同胞を救い出す力強い「支援者」へと変えられたのだ。そして彼女は、キリストのために日夜、汗を流し、涙の祈りをささげている。

聖書は言う。

曙の光が、いと高き所から私たちに訪れ、暗闇と死の陰に住んでいた者たちを照らし、私たちの足を平和の道に導く。(ルカ1:78、79)

極度の貧しさにあえぐ北朝鮮の脱北女性たちが、国境を超えた中国で人身売買によってさらに苦しめられている。その過酷な現実は今も続いているが、長年積まれた世界中の祈りは、遠くない将来、必ずやこの死地の暗闇に夜明けをもたらすことだろう。

中国にいる脱北女性と、彼女たちを最前線で支援する働き手たちのために祈ろう。危険と隣り合わせの命懸けの奉仕者たちが公安の目から守られ、その働きが豊かに実を結ぶように。そして、ソンミのように新しい信者たちが力強く成長し、同胞の女性たちをキリストにある希望のもとに導くことができるように祈っていただきたい。

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■ 北朝鮮の宗教人口
無神論 69・3%
プロテスタント 1・3%
カトリック 0・1%
土着宗教 15・5%
仏教 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。