2026年5月2日10時54分

ワールドミッションレポート(5月2日):北朝鮮 人身売買と20年の孤独─変えられた脱北女性①

執筆者 : 石野博

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北朝鮮と中国の国境に架かる図們(ともん)大橋=2012年(写真:Tokino / CC BY 3.0)

北朝鮮の国境を越え、過酷な飢餓や抑圧から逃れて中国へと渡った女性たちが直面する現実は、しばしば想像を絶するほど残酷だ。彼女たちの多くは、人身売買のブローカーにだまされ、あるいは生き延びるための最後の手段として自らを身売りし、中国人男性の「妻」として売買される。現在、中国国内には数え切れないほどの脱北女性が、そのような形で捕らわれの身となっている。

幼い頃に中国へ売られたソンミも、そんな過酷な運命を背負った一人だった。彼女は中国の農村部で、言葉も通じない見知らぬ中国人男性の妻として売られ、そこから20年間もの長い歳月をその場所で過ごすことになった。彼女にとっての中国での日々は、絶望と紙一重の過酷な生活だった。

彼女を最も苦しめたのは、肉体的な貧しさや自由の剥奪だけではない。何よりも彼女の心を削り取ったのは、「深い孤独と終わりのない恐怖」だった。

中国にいる脱北者は、法的に何の保護も受けられない不法滞在者である。もし公安(警察)に見つかり、北朝鮮人であることが発覚すれば、容赦なく北朝鮮へと強制送還される。送還された後には、苛烈な拷問や過酷な強制労働収容所での日々、あるいは死刑すら待っている可能性がある。そのため、ソンミは近所の人々と親しくなることも、誰かに助けを求めることもできず、常に身元が知られないように息を潜めて生きるしかなかった。

そんな彼女に転機が訪れたのが、2015年のことだった。彼女は、同じ北朝鮮出身の友人から初めてキリストの福音を聞いた。心に響くものがあり、イエスについてもっと知りたいと渇望したソンミは、勇気を振り絞って地元の中国の教会を訪れた。

しかし、その小さな勇気はすぐに心配と不安に押し戻された。彼女はその教会に数回通っただけで、行くのを完全にやめてしまったのだ。

理由は明らかだった。不法滞在者である北朝鮮人は、身元が露見することを恐れるあまり、中国人との接触を極度に避けるのだ。中国の教会のメンバーたちと心を通わせ、共に礼拝をささげることは魅力的だったが、強制送還の恐怖に支配されていた彼女にとって、ハードルが高かった。結局彼女は、心の中に芽生えかけた希望の光に自らふたをしてしまった。そして再び引きこもり、深い孤立の暗闇の中へと戻ったのだった。

誰にも心を許せない。誰ともつながれない。暗闇の中で、ソンミの孤独はさらに深まっていった。しかし、彼女が諦めていたその時も、神は決して彼女を諦めてはいなかったのだ。(続く)

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■ 北朝鮮の宗教人口
無神論 69・3%
プロテスタント 1・3%
カトリック 0・1%
土着宗教 15・5%
仏教 0・4%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。