
島根県の山あいにあるキリスト教愛真高校の1年間を追ったドキュメンタリー映画「聴く隣人のいるところ」が、6月に劇場公開される。
キリスト教愛真高校は、内村鑑三の弟子・高橋三郎が中心となって1985年に設立した全寮制高校。島根県江津市浅利町の「浅利富士」と呼ばれる小高い山の中腹にあり、映画撮影時の全校生徒は34人。学校自らが「日本で一番小さい全寮制高校」とうたっている。
生徒たちは人里から離れたこの場所で、親元を離れて仲間と寝食を共にしながら学ぶ。学校生活にスマートフォンやインターネットはないが、対話する学友や教師、そして音楽が身近にある。
そこでは、互いの意見を述べるだけでなく、聞くこと、受け止めること、時に反論することが、日常の営みとして繰り返される。学校生活のルールである「決まり心得」も、生徒と教職員が参加する「全体会」での話し合いを通して改変されてきた。国内外から集まった生徒たちが3年間の共同生活を送り、他者と向き合いながら自分の声を見つけていく姿を、2時間弱のドキュメンタリー作品に仕上げた。
監督は、同校の卒業生である早川嗣(ゆずる)。一般大学を卒業した後、専門学校で映画制作を学び、テレビニュースの技術職を経て、2018年から写真家・映画監督の本橋成一氏が主宰するポレポレタイムス社に勤務。本作は、早川監督が卒業から20年ぶりに母校にカメラを向け、2024年から約1年にわたって撮影を行った。
共同プロデューサーには、昨年12月に死去した本橋氏と、映画館「ポレポレ東中野」の代表で映画プロデューサーの大槻貴宏氏が名を連ねる。本作は、早川監督にとって本格的なデビュー作であると同時に、本橋氏が最後に世に送り出した作品でもある。
早川監督は、母校について「互いの名前をどう呼ぶか、野良猫を飼ってよいか、ドライヤーを導入するか。『そんなことまで』と思うこともみんなで話し合う、それが日常でした」と振り返る。卒業後は次第にそうした対話に時間を割かなくなってしまったというが、「20年の時を経てもなお、母校は他者を諦めていませんでした。もめていても顔を合わせ続け、共に歌っていました。互いを確認するかのような青春。その人間関係に引かれたのです」と語る。
「聴く隣人のいるところ」は、6月6日(土)からポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。
■ 映画「聴く隣人のいるところ」特報