2026年1月15日11時42分

ワールドミッションレポート(1月15日):タークス・カイコス諸島 カリブの楽園に潜む影と光―観光ブームの裏側で

執筆者 : 石野博

バハマ諸島の南東端に位置するタークス・カイコス諸島は、40の島々と岩礁からなる英国の海外領土だ。透き通るようなターコイズブルーの海と白砂のビーチは「地球上の楽園」と称され、世界中の富裕層や観光客を引きつけてやまない。主要産業である観光とオフショア金融によって経済は潤っているが、その繁栄の陰には、小さな島国特有の複雑な社会問題および霊的問題が潜んでいる。

この国のキリスト教人口は統計上約87%と非常に高い。教会は社会の柱であり、日曜日の礼拝出席率も比較的高い水準を保っている。しかし、その数字だけで「福音化された国」と判断するのは早計だ。多くの人々にとって信仰は「文化的な伝統」に留まっており、聖書の真理が日常生活の倫理や価値観に結び付いておらず、信仰の形骸化は深刻な課題となっている。

特に懸念されるのは、観光ブームとともに流入する世俗的な価値観と物質主義の影響だ。若者たちは教会離れを起こし、薬物乱用や性的な退廃といった問題が静かに、しかし確実に共同体を蝕んでいる。かつて島々を支えてきた素朴な信仰は、急速な現代化の波の中でその力を失いつつあるようだ。

また、この国が抱える最大の宣教的課題は「移民問題」にある。近隣のハイチから、貧困と政情不安を逃れて多くの人々がボートでこの島にたどり着いている。現在、人口の少なからぬ割合をハイチ系移民が占めているが、地元住民(ビロンジャーズと呼ばれる)との間には、雇用や社会保障を巡っての深い溝と緊張関係が存在する。ハイチ人コミュニティーは社会の片隅で孤立しがちだ。彼らに対する差別や偏見は、キリスト教会の中にさえ影を落としているのが現実だ。

しかし、この緊張の中に、希望の光もある。ハイチ人コミュニティーの中では、逆境の中で神にすがる熱心な信仰が燃えている。彼らの霊性が、冷え切った既存の教会に新しい風を吹き込む可能性を秘めている。今、求められているのは、文化的・民族的な壁を超えた「キリストにある一致」である。

タークス・カイコス諸島の教会が、伝統の殻を破り、生きた信仰へと目覚めるように祈ろう。富や快楽といった現代の偶像に惑わされることなく、真の霊的リバイバルが若者たちの霊性を呼び覚ますように。そして、ハイチ系移民と地元住民の間に横たわる壁が福音によって打ち壊され、互いに愛し合い、支え合う新しい共同体が形成されるように祈っていただきたい。

■ タークス・カイコス諸島の宗教人口
プロテスタント 71・8%
カトリック 11・4%
無宗教 9・6%
その他 7・2%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。