
グラミー賞を3度受賞した経験がある著名なゴスペル歌手で牧師のドニー・マクラーキン氏(66)は7日、自身の教会で秘書を務めていた男性から強制性交と性的暴行で訴えられたことについて、「捏造(ねつぞう)であり、事実無根」とする声明を発表した。
「最近私に対して提起された、性的暴行や強制性交、強要といった卑劣な告発について、既にご存じの人も多いと思います。私は、これらの訴えが捏造であり、事実無根であることを、ここにはっきりと、そして断固として表明します」
世界で1千万枚以上のアルバムセールスを記録し、グラミー賞受賞曲「We Fall Down」で知られるマクラーキン氏は、自身のフェイスブックに投稿した声明(英語)で次のようにつづっている。
「私は、こうした虚偽の主張が持つ重みを十分に理解しています。特に、信仰と信頼、そしてイエス・キリストの教えを礎とする私たちのコミュニティーにおいては、その重みは計り知れません。また、いかなる形であれ、性暴力は多くの人々にとって極めて深刻で苦痛に満ちた現実であり、決して軽々しく扱われてはならないものです」
マクラーキン氏は、幼少期に受けた近親者からの性的虐待や、同性愛の生活から救い出されたという自身の体験談をもとに、自身の伝道の働きや教会を築き上げてきた。
マクラーキン氏を提訴したのは、元秘書のジュゼッペ・コルレット氏(43)。コルレット氏は、2日にニューヨーク州最高裁に提出した訴状で、21歳ごろから繰り返し性的暴行や強制性交の被害を受けてきたと主張している。
訴状によると、コルレット氏は、マクラーキン氏が牧会するニューヨーク州フリーポートのパーフェクティング・フェイス教会(英語)の元信徒で、一連の被害を受けたとされる時期には、マクラーキン氏の個人秘書も務めていたという。
一方、マクラーキン氏は声明で、自身を「被害者」とするコルレット氏の主張を否定している。
「真の被害者は、その声を聞かれ、守られ、そして支援されるべき存在です。しかし、同時に重要なのは『真実』です。そして今回、真実は語られていません。こうした虚偽の性質を持つ事柄において、私たちは陥りがちですが、最初の報道や騒動だけで、既に意見を固めてしまっている人が多くいることも知っています。しかし、このコミュニティーの皆さんには、真実が完全に明らかになるまで忍耐を持ち、神のタイミングを信じて待ってくださるよう切に願います」
「私はこれまで、クリスチャンとしての生活と義務を果たす上で、常に誠実さと透明性、そして神に対する畏敬の念を持ち、責任ある行動を心がけてきました。今回の告発にあるような、みだらな関係や、誰かを傷つけたり、搾取したり、利用したりするような不適切な行為、そして私の立場や指導力、影響力をいかなる形であれ悪用したという主張は、断じて事実無根です」
コルレット氏は訴状の中で、パーフェクティング・フェイス教会に通い始めたのは2003年8月で、当時はまだ21歳だったとしている。01年に出版されたマクラーキン氏の著書『Eternal Victim Eternal Victor(永遠の被害者、永遠の勝利者)』を読んだことがきっかけで、教会を訪れたという。マクラーキン氏はこの著書の中で、自身がいかにして同性愛から解放されたかをつづっている。
コルレット氏は、「自身の信仰に照らし合わせ、自らの性的指向を受け入れることに葛藤していた」ため、マクラーキン氏の教会に助言を求めたと主張している。訴状によれば、コルレット氏は、マクラーキン氏と彼のチームメンバーの少なくとも1人から、グルーミング(性的手なづけ)や性的搾取の標的にされたという。コルレット氏は、教会に通い始めてから3週間もたたないうちに、性的誘いが始まったと主張している。
「2003年8月3日またはその近くの礼拝の後、原告(コルレット氏)は被告マクラーキン氏のもとに案内されました。そこでマクラーキン氏は彼(コルレット氏)のために祈りをささげ、同性愛から救い出されるよう手助けすることを約束したのです」
「その後間もなく、被告の教会の牧師の一人が原告に接触し始めました。その牧師は自身も同性愛に葛藤していると原告に打ち明けましたが、執拗に連絡を取るようになり、予告なしに原告の自宅に現れたり、さらには性的なアプローチを仕掛けてきたりしました」
コルレット氏は、度重なる性的アプローチを受けたため、一時は教会を離れることも考えたという。しかし、マクラーキン氏から直接連絡があり、嫌がらせをした牧師については「対処中」であるとした上で、その牧師から受けたセクシュアルハラスメントは「神から与えられた試練」であり、コルレット氏はそれに合格したと諭され、引き留められたという。
その後、コルレット氏はマクラーキン氏から助言を受ける関係となり、ほどなくして個人秘書として雇われることになった。
マクラーキン氏との関係はやがて、若き日のコルレット氏を困惑させるようになった。コルレット氏は訴状で、同性愛を克服するための「祈りのセッション」の最中に、マクラーキン氏から同意のないまま性器を触られるなどのわいせつな行為を受けたと主張している。
「被告は原告にとってのメンターであると同時に雇用主でもあったため、原告はこれらの性的虐待をどう受け止めるべきか苦悩した。その二重の関係性が、自身が受けた被害について声を上げることを困難にした」と訴状には記されている。
コルレット氏はさらに、その後10年間にわたり、マクラーキン氏から本人の意志に反して複数回の性的行為を強要されたとして、詳細を生々しく記述している。その中には、2013年6月28日にニューヨーク州ナイアガラフォールズのホテルで起きた出来事も含まれている。コルレット氏の主張によれば、その出来事の後、マクラーキン氏は自身の振る舞いを謝罪するメールをコルレット氏に送ったという。メールの中でマクラーキン氏は、自身のことを「絶望的なまでに汚れた『老いぼれ』の典型だ」と表現したとされる。
訴状の中で公開されたメールの写しによれば、マクラーキン氏は次のようにつづっている。
「私の誤った振る舞いによって、あなたを不当な立場に追い込んでしまったこと全てを謝罪したい。私は、助けや導き、そして霊的な支えを求めて頼ってきた一人の若者、友情や親密なプラトニックな関係を求めているだけの若者に対して、ベタベタと触り、体をまさぐるような、絶望的なまでに汚れた『老いぼれ』の典型だ」
コルレット氏はこのほか、「精神的な葛藤を経験していた」という昨年11月、マクラーキン氏から指導を受けるため、教会に戻った際にも再び暴行を受けたと主張している。
マクラーキン氏は、200万人を超えるフォロワーに向けた声明で、自らの潔白を訴えるとともに、自身とコルレット氏のために祈るよう呼びかけている。
「キリストへの愛とキリストと共に歩むことは、私にとって全てであり、非常に繊細で神聖なものです。私は主を喜ばせるために生きています。だからこそ、事実関係が慎重に、責任を持って、そして公正に明らかにされることが不可欠です。正式な訴状はまだ届いていませんが、適切な手続きに全面的に協力し、この名誉毀損的で根拠のない訴訟に対して、精力的に、そして全力で抗弁します。真実が完全に明らかになれば、私の無実が証明されると確信しています」
「告発者のためにも、真剣に、そして心からお祈りください。皆さんの変わらない祈り、支援、そして信頼に感謝します。皆さんに神様の祝福がありますように」