2026年1月2日08時11分

ワールドミッションレポート(1月2日):イラク 今も生きて働く神―絶望の地下牢を征服する福音の光②

執筆者 : 石野博

イラク・クルディスタン(北部クルド人自治区)のキリスト者、ジェイコブ・ナザール。これは、IS(イスラム国)の戦闘員によって拉致され、想像を絶する17日間の監禁生活を通して、神が今も生きて働き、いかにして敵意と殺意と暴力が制圧され、永遠の命の希望に変えられたのかを物語る、彼自身による驚くべき手記だ。(第1回から読む)

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イラク・クルディスタンのエルビルの埃(ほこり)っぽい通りは、成人してからの人生の大部分を過ごした私の故郷です。私はカルデア系クリスチャンの家庭で育ちました。中東でキリスト教徒であることは、絶え間ない嵐の中で生きることを意味します。

父のエラス・ナザールは小さなコミュニティー病院の医師で、母のミリアムは地元の学校で英語を教えていました。多くの人々が安全を求めて国を去りました。しかし、私の両親は祖国に留まることを選びました。「なぜ欧州や米国に行かないのか」と両親に尋ねると、父は「この土地には光が必要だ」と言ったものです。

人道支援活動に進む道は、容易ではありませんでした。私はバグダッド大学で土木工学を学びましたが、そこでの宗教的な事柄に関する空気は、いつも緊張し張り詰めていました。私は目立たないようにすること、言葉を選ぶこと、どのような状況で信仰を明かすべきかを学びました。

しかし、2014年のISISの台頭によって全てが変わりました。クリスチャンが虐殺され、教会ががれきと化し、家族全員が家を追われるのを見て、私は見て見ぬふりができず、内なる使命感が燃えていました。

同胞が苦しんでいるのを見ながら、ただ建物を建てるだけではいたたまれなくなったのです。2018年、私は国際的な人道支援団体への参加を決め、工学の背景を生かして戦争で荒廃した村々の再建を支援しました。

私の仕事は、状況がやや穏やかなCEDA地域が中心でしたが、それでも細心の注意が必要でした。毎日同じルーティンで始まりました。祈り、聖書、そして地元チームとの徹底的な安全評価です。「敵の目は常に監視しているから、決して同じルートを2度通らないように」と、安全コーディネーターのファリドは口すっぱく警告しました。

拉致されるまでの3年間は、非常に意義深い時間を過ごしていました。教会が灰の中から立ち上がり、群れが再び希望を見いだし、失ったと思っていた家に家族が戻るのを目の当たりにしたのです。また、地元の信者を守るために、常に場所を変え、暗号やコードを使いながら、小さな祈り会と聖書研究グループを密かに組織してきました。

多くの証しの中でも、サラの話は際立っていました。サラは、ムスリムから回心した若い女性です。サラの物語です。彼女の家族がサラの改宗を知ったとき、彼らは彼女を完全に拒絶しました。その時から、彼女は私たち兄弟姉妹のネットワークの中に逃れてきたのです。

「あなたの言葉よりも先に、あなたの思いやりが私にキリストを見せてくれました」。ある朝食の席で彼女が語った、簡素ながらも意味深いこの言葉は、その後の監禁生活で私を支える希望になるなどとは、この時は全く知る由もなかったのです。

拉致の前夜、私は不吉な夢を見ました。夢の中で私は、覆面姿の男たちに囲まれ、暗い独房に閉じ込められている自分を見たのです。しかし、どういうわけか、恐怖を感じる代わりに、不思議な平安が私を包み込んでいました。

目が覚めたとき、私は一緒に働いていた同僚の兄弟ラシードにその夢のことを話しました。「これは警告かもしれない。明日のモスル行きはやめるべきだ!」と、彼は私に説得を試みました。しかし私は、私が運ぶ物資を待っている多くの家族がいることを知っていました。これを運ぶのは私にしかできません。私は決して後退はでいないと確信していました。

「神が賜ったのは臆病の霊ではない」(2テモテ1:7)を思い出し、私は答えました。「ラシード、心配するなよ。もし暗闇に立ち向かわなければならないのなら、なぁに、そこに光を持っていくまでさ」。彼は黙ってうなずき、私たちはその夜、これが最後になるかもしれないと予感させるがごとく、いつもより長い祈りをささげたのです。(続く)

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■ イラクの宗教人口 ※内線前の統計
イスラム 98・6%
プロテスタント 0・2%
カトリック 0・04%
正教会 0・3%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。