2025年12月30日09時14分

ワールドミッションレポート(12月30日):ツバル 南洋の島国が、岩なるキリストに立つように祈ろう

執筆者 : 石野博

南太平洋に浮かぶツバルは、9つのサンゴ礁の島々からなる世界で最も人口の少ない国(1万1千人)の一つだ。海抜が最高でも約4メートルという脆弱(ぜいじゃく)な地形のため、海面上昇の脅威に常にさらされている。独自の伝統文化を重んじ、海と共に生きる人々は、今、国家の存立そのものが問われる存亡の危機に直面している。

ツバルの宣教情勢を語る上で欠かせないのが、国家宗教ともいえる強固な伝統だ。人口の約9割がツバルキリスト教会(EKT)に属し、キリスト教は生活の一部となっている。しかし、この「伝統としてのキリスト教」が、個人の内面的な信仰や聖書の真理を妨げる壁となっている側面も否認できない。多くの島民にとって、教会への帰属はアイデンティティーの一部だが、人格的なキリストとの出会いや、生きた信仰にまで至っていない「形骸化」が現在の大きな課題となっている。

近年、ブレザレン派やペンテコステ派といった少数派の群れが活動を広げているが、伝統を重んじるコミュニティーとの間には摩擦が生じている。極めて小さな島社会において、新しい教えを受け入れることは、家族や地域共同体からの孤立を意味することもある。信仰の自由と伝統の維持との間で、激しい葛藤が生まれているのが実情だ。

また、海面上昇などの環境問題は、国家の存続を脅かしている。「国が海に沈むかもしれない」という出口のない不安に対し、キリスト教信仰がいかに真の希望を提供できるかが問われている。単なる儀式や伝統ではない、嵐の中でも揺らぐことのない「永遠の岩」としてのキリストを、一人一人が自らの土台として見いだす必要がある。

伝統に縛られた人々が霊的に刷新され、福音の恵みに目を開かれるよう祈ろう。困難な環境の中で、天地を造られた主の主権を信頼し、たとえ山が海の真ん中に移ることがあっても(詩篇46:2)、ツバルの人々が決して動くことのない不動の信仰へと導かれるように祈っていただきたい。

■ ツバルの宗教人口
プロテスタント 94・6%
カトリック 1・0%
異端派 2・1%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。