2025年12月5日23時57分

米最大の民間慈善財団、神学教育機関やキリスト教団体に総額1千億円超を助成

米最大の民間慈善財団、神学教育機関やキリスト教団体に総額1千億円超を助成
米福音派の代表的神学教育機関であるフラー神学校。今年のリリー基金の助成対象に選ばれた。(写真:同校)

保有資産が1千億ドル(約15兆円)を超える米最大の民間慈善財団「リリー基金」は11月24日、93の神学教育機関やキリスト教団体などに、総額6億4800万ドル(約1千億円)余りを助成すると発表した。

このうち4億1600万ドル(約640億円)は、リリー基金の「明日のための道イニシアチブ」を通じて、米国とカナダの神学校やキリスト教大学45校に送られる。2021年に始まったこの取り組みは、「米国とカナダの神学教育機関が現在と将来において、キリスト教会のために、按手(あんしゅ)を受けた牧会指導者と信徒の牧会指導者を養成する能力を強化する」ことを支援するもの。

リリー基金の宗教部門担当副会長であるクリストファー・コーブル氏は発表(英語)の中で、「神学教育機関は、教会のために牧会指導者を養成・支援する上で、極めて重要な役割を担っています」と述べている。

「神学教育機関が重要な使命を継続し、影響力を高めるための最も有望な道は、他の学校や教会、その他の教会関連団体と協力することです。そうすることで、現在と将来において、効果的な奉仕のために牧会指導者を養成・支援する集団的能力を強化できます」

リリー基金は2021年以降、この取り組みを通じて神学教育機関に対し総額7億ドル(約1080億円)を助成している。助成を受けた学校のうち、163校は財政・教育能力の強化で、61校は他団体との大規模な共同事業で助成を受けた。

今年の助成が決まった45校は、プロテスタントの福音派、主流派、無教派、ペンテコステ派の他、正教会やカトリック、黒人教会など、さまざまな教派的背景を持つ。各校に対する助成額は、250万〜1千万ドル(約3億8千万〜15億5千万円)。最高額の1千万ドルが決まったのは、フラー神学校など27校で、他に8校もほぼ1千万ドルを受け取る。

残りの2億3200万ドル(約360億円)は、リリー基金の「キリスト教の信仰と生活に関する全国ストーリーテリング・イニシアチブ」を通じて、48のキリスト教団体に送られる。各団体に対する助成額は、280万〜500万ドル(約4億3千万〜7億7千万円)。ワールド・ビジョンやプリズン・フェローシップなどのキリスト教団体のほか、教会や大学も対象団体として挙げられている。

この取り組みは昨年始まり、「多くの異なる背景を持ち、さまざまな環境にあるキリスト者が、生き生きとした信仰生活を送り、他者への愛と奉仕に従事していることを伝える、説得力のあるストーリーを、それぞれの団体が見いだし、証しとしてまとめ、共有する」ことを支援するもの。昨年は12団体が助成を受けた。

コーブル氏は発表(英語)の中で、次のように述べている。

「多くの地域社会のキリスト教指導者は、信仰がいかに、人生の意味や希望を見つける上で人々の助けになり、互いを結び付けているかについて、力強い証しを当基金に分かち合ってくれます。宗教の衰退を強調する多くのメディアの報道とは裏腹に、これらの証しは、個人や教会が、隣人の必要に配慮し、友人や見知らぬ人を親切にもてなし、地域社会の癒やしと和解を促進することで、信仰を実践していることを物語っています」

「この取り組みを通じて助成を受けた団体が、これらの証しに光を当て、多くのキリスト者が信仰を通じて経験する活力を目に見えるものにすることを、当基金は期待しています」

リリー基金は米製薬大手イーライリリー社の筆頭株主で、金融情報サイト「インベスティング・ドット・コム」(英語)によると、同社の株式9250万株を所有する。同社は11月25日、製薬会社では初めて時価総額1兆ドル(約155兆円)を達成し、これによりリリー基金の保有資産も1千億ドルを超えることになった。

保有資産は昨年12月時点で、既に米マイクロソフト社の共同創業者ビル・ゲイツ氏のゲイツ財団を上回っており、米国の民間慈善財団としては最大。

父が創業したイーライリリー社を引き継いだジョサイア・カービー・リリー・シニア氏と、その2人の息子であるイーライ・リーリー氏とジョサイア・カービー・リリー・ジュニア氏が、「宗教的、教育的、慈善的な目的の推進と支援」のために、1937年に設立した。

リリー基金のウェブサイト(英語)では、「当基金はその歴史を通じて、人間の精神、知性、および人格を育むことを追求してきました。かつて、基金の主な目的が何であるべきかを尋ねられた際、イーライ・リリーは、『米国市民の人格を向上させる助けとなることを私は願っています』と語りました」と説明している。