2025年12月3日09時35分

ワールドミッションレポート(12月3日):ソマリア 厳しい大地に芽を出す福音の種

執筆者 : 石野博

アフリカ東端「アフリカの角」に位置するソマリアは、インド洋とアデン湾を臨む遊牧民の国だ。古代交易路の要衝として栄えた歴史を持つが、1991年の政権崩壊以降、内戦、干ばつ、飢饉、過激派の台頭が続き、今も世界で最も不安定な地域の一つとされる。人口の大半はソマリ族で、宗教はほぼ100%イスラムだ。社会のあらゆる領域がイスラム的規範と不可分なのである。

この国で、キリスト教への改宗は命の危険を伴う。家族からの追放、部族の制裁、武装勢力による報復などがある。それでも、夢や幻を通してイエスに出会ったと証しする若者や女性たちが、近年増えている。対面での伝道が非常に困難なため、衛星放送、オンライン聖書、短い音声メッセージなどのデジタル媒体が希望への窓となっている。

ナディラの話を紹介しよう。彼女は夫に捨てられ、離婚させられた。夫は5人の子どもを残して別の国で新しい家庭を築いた。ナディラの生活は困難に陥ったが、彼女はあるきっかけで主イエスを信じた。状況は困難でも、キリストにある内なる平安が彼女に宿った。また、数少ない信者仲間たちも彼女を支えた。

ところがある日突然、元夫が来て、息子のサミを無理やり連れて行ってしまった。新しい家庭の使用人としてサミを働かせるというのだ。ナディラはサミのことで心を痛め、涙と断食で祈り続けた。そしてついに12カ月後、サミが戻ってきたのだ。11歳の少年はトラウマを抱え、飢えに苦しんだが、母のもとに戻ると元気になり、無邪気に喜んだ。

暴力と干ばつに裂かれたこの地に、主の慰めが届くように祈ろう。ナディラのような小さな家庭に、主の守りと平安が与えられるように、夢と幻を通して主に出会うソマリア人がさらに起こされ、彼らの村とキャンプに福音が届き、いつの日か自由に礼拝がささげられる日が訪れるように祈っていただきたい。

■ ソマリアの宗教人口
イスラム 99・6%
プロテスタント 0・05%
カトリック 0・01%
英国教会 0・01%
正教会関係 0・28%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。