2025年12月2日10時50分

ワールドミッションレポート(12月2日):バヌアツ “In God We Stand” の島々に吹く風

執筆者 : 石野博

南太平洋に浮かぶ群島国家バヌアツは、およそ80〜120の島々から成り、首都ポートビラを擁するエファテ島を中心に、火山、珊瑚礁、青く深い海、豊かな自然、そして古くからの島ごとの文化が混ざり合う、美しくも多様な国だ。

1980年まで欧仏共同統治下の「ニュー・ヘブリディーズ」と呼ばれていたこの国は、独立以降「われらの土地、永遠に」を意味するバヌアツという国名の下、独自の歩みを続けてきた。主要産業は農業と観光。コプラ、カバ(伝統飲料の原料)、ココア、木材などが輸出され、自然美あふれる海や山、火山といった観光資源は、多くの旅行者を引きつける。近年は観光振興を通じて経済成長を図る努力が続いている。

そんなバヌアツの国歌はビスマラ語で「Long God yumi stanap = In God we stand(神に立つ)」を意味する。つまり福音派の信者たちが国の形成と社会に深い関わりを持ってきたのだ。独立運動にもキリスト者が参加し、今も政治や地域リーダーの中に信仰者が多く、教会は社会の土台となっている。

特に注目すべきは、言語と文化の多様性の中で福音が根を下ろしつつあることだ。バヌアツには100以上の島々と100以上の言語が存在し、世界で最も「言語密度」の高い国の一つとされる。そんな多様性の故に、島ごとに福音を聞いたことがないという状態があり、容易に伝道できる環境とはいえない。しかしそれでも、多くの宣教師や地元の信者たちが小さな島々へ、言葉の壁を越えて福音を携え行こうとしている。

バヌアツの島の中には、“聖霊” など聖書由来の名前を持つ島もある。例えば最大の島は 「スピリトゥ・サント(聖霊)」、あるいはペンテコスト島などだ。そんな地名は、まるで神の働きがこの島々に及ぶことを、古くから予告していたかのようである。

今、バヌアツの若い世代、島のリーダー、村の首長である信者たちが、共同体の模範者であろうとする姿が語られている。祈りと礼拝、共同体の結束、そして地域への奉仕、それらが、バヌアツの文化と社会を支える柱として再び立て直されようとしているのだ。

どの島でも、言語や部族、地域の違いによらず、福音の種が根づき、聖霊の実が結ばれるように祈ろう。教会や信者たちが世の光、地の塩となり、教育、医療、地域の統合、文化の変革へとつながる証しがなされるように、そして、バヌアツが、本当に「神に立つ国」として、その霊性と文化が証しとなるように祈っていただきたい。

■ バヌアツの宗教人口
プロテスタント 73・5%
聖公会 12・1%
カトリック 11・9%
土着宗教 3・4%
バハイ 1・8%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。