
「世界最大の民主主義国家」といわれるインドだが、ヒンズー民族主義者によるキリスト教徒に対する迫害については、依然として深刻な懸念を抱えている。
国際迫害監視団体「オープンドアーズ」が、キリスト教徒に対する迫害が深刻な50カ国をまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト」(英語)で、インドは、共産主義国の中国や厳格なイスラム教国のサウジアラビアを上回り、11位に位置している。
最近伝えられた2つの事件は、その状況を象徴している。1つは、宣教師らを乗せたバスが、ヒンズー教徒の男らに襲撃された事件。もう1つは、ヒンズー教寺院建設のための寄付を拒否したキリスト教徒の住民らが、ヒンズー教徒の近隣住民から村八分にされ、貧困に追い込まれている事件だ。
宣教師のバス襲撃事件は、10月23日に発生した。インド南部ケララ州出身の宣教師10~15人のグループが、地元住民の招待を受け、北部ジャンムー・カシミール州の村を訪れていたところを襲撃された。インターネット上に拡散された映像には、複数の男らが小型バスを取り囲み、棒でフロントガラスなどをたたき割る様子が映っており、宣教師らのものとみられる悲鳴も聞こえる。
Reports from Kathua, J&K suggest that some missionaries from kerala were allegedly attempting religious conversions by offering money & insulting hindu gods.
Locals reportedly confronted and serviced them properly before handing them to authorities. pic.twitter.com/j2W2KgAXrN
— Megh Updates (@MeghUpdates) October 24, 2025
国際人権団体「世界キリスト教連帯」(CSW、英語)によると、宣教師らは「金銭を提供して改宗を企て、ヒンズー教の神々を侮辱した」として襲撃されたという。警察は当初ほとんど介入せず、負傷者は出なかったものの、適切に対応しなかったとして警察官8人が停職処分となった。
CSWのマービン・トーマス創立会長は、次のように語っている。
「この残忍な襲撃は、緊張が高まる地域で平和的な宗教的少数派が直面する不寛容の大きさを痛感させます。われわれはジャンムー・カシミール州当局に対し、正義が貫徹され、宗教や信仰にかかわらず全ての少数派の安全が保障されるよう行動することを求めます」
一方、インド南部の小さな漁村では、キリスト教徒の住民約100世帯が、ヒンズー教徒の近隣住民から社会的・経済的に排斥され、既に9カ月近くたっている。これは今年初め、村にヒンズー教寺院を建設する計画が持ち上がり、キリスト教徒の住民らが建設のための寄付を拒否したことが発端となって始まった。
オープンドアーズ(英語)によると、キリスト教徒の住民らは、共同漁場への立ち入りや社交行事への参加、生活に必要な物品の購入やサービスの利用を拒否されているという。ヒンズー教徒の近隣住民は、罰金を科される恐れがあるため、彼らと会話することさえ拒んでいる。そのため、キリスト教徒の住民らは、魚が捕れても村で売ることはできず、別の村にまで売りに行かねばならない状況にある。
村に住むキリスト教徒の女性は、オープンドアーズに次のように語った。
「お隣さんとも話せません。話せば罰金を科されます。お店に行っても、商品を売ってくれません。そのため、日常生活を送るのに非常に苦労しています。長年共に暮らしてきた場所で、今や異邦人のように扱われることに、深い悲しみを感じています」
インドでは通常、ヒンズー教寺院の建設のために寄付を強制されることはないが、オープンドアーズの現地パートナーは、ヒンズー民族主義者らの影響が背景にあると話している。
地元当局は状況の改善を求められているが、村の指導者らは対応を拒否し続けている。キリスト教徒の住民らは裁判所に訴えるなど法的な対応に出ているが、審理が始まるまでに、さらに2カ月待たなければならない状況だという。