2025年11月6日15時40分

ワールドミッションレポート(11月6日):ベネズエラ 福音冊子が切り開く新たな地平

執筆者 : 石野博

混迷する南米のベネズエラに、ひと筋の光が差し込んでいる。現在、政情不安、経済崩壊、偽宗教の台頭、さらにはマルクス主義ゲリラの影響などが、日常の生活を脅かすこの国で、福音宣教のための新しい機会が静かに開かれている。数年ぶりに、福音小冊子とバイブルスタディー教材が支援団体から教会・牧師たちに届けられたのだ。

冊子伝道を中心に宣教活動を展開するワールド・ミッショナリー・プレス(WMP)によると、新しいチャンスとともに新しい扉が開かれているという。福音の種は、危機のただ中にこそまかれ、道が開かれているのだ。

ベネズエラでは、人々の福音に対する渇きが、かつてないほど高まっている。冊子が届いた教会では、路上フェアや地域社会への配布活動を通して、食事と福音冊子の提供を組み合わせて地域住民の関心を集めている。人々が、キリストの愛に応えて御言葉に耳を傾けている。このような反応を見て、地域の教会も牧師も大きな励ましを受けているというのだ。

この活動が持つ意義は、単なる宣教物資の配布にとどまらない。ベネズエラの多くのクリスチャンは「第一世代」の信者であり、信仰の土台がまだ浅い。そのため、配布された書籍が「伝道するため」そして「新しい信者を育てるため」の道具として、教会にとって不可欠なものとなっている。WMPは、新しい魂の救いのために冊子を送るのはもちろんのこと、地域教会の牧師たちが自分の地域で伝道し、信者の成長を助け強めていけるためのリソースも提供している。

これらの福音冊子は直接配布されることもあれば、直接渡せない場合でも、人々が手に取れるように置いておくツールとして使われる。​聖霊が神の言葉をとって、人々に働きかけるのだ。​御言葉が語られ、誰かがそれを受け入れたとき、新生と成長のプロセスが始まるのだ。

とはいえ、うれしい悲鳴だが、課題も山積している。支援を待つ国々の要請は急増しているが、印刷・発送・翻訳・配布を担う奉仕者の数は限られ、発送する側のスタッフが十分に対応できるように、特に祈りが必要だ。

ベネズエラの現状は、福音が封じられた地域でも、適切な時に適切な手段を通して人々の心が開かれることを示している。途絶えていた扉が今、再び少しずつ開かれ、希望の光が差し込んでいるのである。

WMPに必要な備えと守りとが与えられ、世界中の必要な地域に福音冊子が届けられるように祈ろう。そしてベネズエラの教会と牧師たちが、この新しい機会を用いて福音を大胆に宣べ伝え、信仰の土台を築き上げることができるように祈っていただきたい。

■ ベネズエラの宗教人口
カトリック 71・1%
プロテスタント 12・2%
正教会関係 0・1%
イスラム 0・4%
ユダヤ教 0・1%

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。