2025年10月15日16時09分

中国当局、政府非公認教会の著名牧師ら約30人を拘束 米国務長官が非難声明

中国/習近平
中国の習近平国家主席=2025年(写真:Photo Agency / Shutterstock)

中国最大級の政府非公認教会の一つである「錫安(シオン)教会」を率いる金明日(ジン・ミンリ、英語名:エズラ・ジン)主任牧師が10日、広西チワン族自治区北海の自宅で当局に拘束された。「家の教会」や「地下教会」と呼ばれる政府非公認教会に対する大規模な取り締まりの一環とみられ、この数日に国内の主要都市で、錫安教会の牧師や信者ら約30人が拘束されたり行方不明になったりしている。

金牧師の娘である金婷娅(ジン・ティンヤ、英語名:グレース・ジン)さんは、米FOXニュース(英語)に対し、拘束された牧師たちの家族は不意を突かれたと語った。

「次々と連行され、拘束されました。家の外にも人がいると言っていて、一人ずつ連行されていきました」

当局は、金牧師らがオンライン上で宗教資料を拡散したとして、「情報ネットワークの違法使用」の容疑で拘束したと報じられている。

婷娅さんはFOXニュースに、かつて毎週1500人以上の礼拝者がいた錫安教会が、2018年に政府によって閉鎖された経緯を説明した。それによると、同教会は国への登録を拒否したため、国内で非合法とされる政府非公認教会に分類された。しかし、信者らは閉鎖後も、オンライン礼拝や小規模な祈祷会を通じて集い続けた。

その後、新型コロナウイルス感染症の拡大期に、錫安教会は中国で数少ない定期的なオンライン礼拝を提供する教会となり、国内各地のキリスト教徒がそのオンライン礼拝に参加するようになった。他の教会もデジタル移行する中、金牧師は自身の技術やツールを分かち合い、牧師仲間や幅広い信仰共同体との絆を強めたという。

金牧師は18年以降、当局の監視下に置かれ、国外への出国を禁止されているため、米国籍を持つ子どもたちとの再会の機会は完全に断たれている。最後に子どもたちに会ってから、既に6年以上が経過している。

婷娅さんは、今回の家宅捜索では財務書類が押収されており、今年初めに他のキリスト教指導者らに対して行われたように、当局が金牧師を「詐欺」の罪で起訴する可能性を懸念している。

米国に拠点を置く対中キリスト教人権監視団体「チャイナエイド」は、今回の拘束は政府非公認教会に対する「前例のない圧力」の一環だと指摘。チャイナエイドの傅希秋(フー・シーチウ、英語名:ボブ・フー)会長は、FOXニュースに次のように語った。

「習近平国家主席は錫安教会のような神の教会に対して戦争を仕掛けていますが、決して勝てないでしょう。信教の自由に対する迫害のレベルは、ここ40年で最悪のレベルに達しています」

「信仰は犯罪ではありません。礼拝は犯罪ではありません。祈りは犯罪ではありません。中国都市部の牧師や信者たちの勇気は、キリストの光が暴政によって消されることはないという生きた証しとして、歴史に刻まれるでしょう」

金牧師の家族は米国務省に対し、金牧師が米国にいる愛する者たちと再会できるよう、「即時かつ無条件」の釈放を求めるよう要請した。また、傅氏も米政権に対し、中国政府による教会への弾圧を公に非難するよう求めた。

これを受け、米国のマルコ・ルビオ国務長官は12日、声明(英語)で次のように非難した。

「米国は、中国共産党が最近、著名な牧師であるエズラ・ジン氏を含む、中国国内の未登録教会『錫安教会』の指導者数十人を拘束したことを非難する。この弾圧は、信仰への党の干渉を拒否し、未登録の家の教会で礼拝することを選んだキリスト教徒たちに対して、中国共産党がいかに敵意を抱いているかを一層明らかにするものだ」

「われわれは、中国共産党に対し、拘束された教会指導者たちを直ちに釈放し、家の教会の教会員を含む全ての信仰者が、報復を恐れることなく宗教活動に従事できることを求める」