2025年10月15日08時45分

ワールドミッションレポート(10月15日):ジンバブエ 荒廃からの回復を求めて

執筆者 : 石野博

アフリカ南部の内陸国ジンバブエは、かつて「アフリカの穀倉」と呼ばれるほど豊かな農業国であった。しかし、長年にわたる政府の腐敗と無能な政策によって、その繁栄は崩れ去った。2000年代初頭、ムガベ政権が戦争退役軍人たちに白人所有の農地を分配したことにより、国内の農業生産は壊滅的な打撃を受けた。肥沃(ひよく)な土地は荒廃し、国はもはや自国民を養うことすらできなくなった。

さらに深刻だったのは経済危機だ。かつて、世界でも最悪のハイパーインフレに見舞われ、通貨ジンバブエ・ドルは紙切れ同然となった。人々は南アフリカ・ランドやアメリカ・ドルなど、外国通貨を日常的に使うようになり、国家の金融システムは事実上崩壊した。多くの教育者、医療従事者、ビジネスリーダーなどが、より良い生活を求めて国外へと流出した。こうした「頭脳流出」は国の再建を一層困難にしている。

貧困は深刻で、かつて大陸随一と称された教育制度も崩壊した。今では4人に1人の親が学費を支払えず、子どもたちが学校に通えない現実がある。多くの家庭が飢えと病に苦しみ、教会は食料や医療の支援を通じて人々を助けている。

一方で、国外に散ったジンバブエ人たちは、南アフリカやボツワナ、英国、さらには米国やオーストラリアなどで信仰共同体を築き、互いに励まし合っている。彼らの多くは、いつか祖国の復興に貢献する日を夢見て祈り続けている。ディアスポラ(離散の民)の中にある教会は、分裂ではなく一致の証人としての使命を担っている。

国内外の教会が、経済的な再建だけでなく、人々の心に信仰と希望を取り戻す働きを進めている。神の民がこの国の傷を癒やし、かつての繁栄ではなく、より深い霊的豊かさに立つ新しいジンバブエを築くために立ち上がることが求められているのだ。

長年の苦しみの中にあるこの国が、神によって癒やされ、信仰の民が再び立ち上がるよう祈ろう。また、国外に散ったジンバブエの信者たちが一致して主の働きを担い、祖国の回復に貢献できるように祈っていただきたい。

■ ジンバブエの宗教人口
プロテスタント 67・3%
カトリック 9・6%
イスラム 1・1%
土着宗教 19・3%

◇

石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。